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  二次創作の文を置いてます。 駄文ばかりに付き読後の苦情はご勘弁を。 コメントのパスワードは「君に届け」です。
                       
   
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随分前からジワジワ書いてた高2のクリスマスの話です。
全然「楽しくクリスマス♪」な話ではないので
楽しい話が読みたい方はスルーしてください。



拍手[11回]

   

   


学校からあやねちゃんと二人で帰路についた。
いつになく深い話をして、岐路であやねちゃんと別れた。

あやねちゃんのことを考えていた。
師匠はいい人だから、あやねちゃんのこと
大好きだって思ってくれてるから、
師匠の気持ちがあやねちゃんにちゃんと届くといいのにと思ってた。
私は師匠もあやねちゃんも大好きだから、
二人に幸せになって欲しいと本当に思ってた。

自分のことも風早君のこともその時は考えてなかった。


なのに突然、去年の風早君の声が頭の中にこだました。




『彼氏彼女いないやつ、みんなでやろーよ、クリスマス!』




そう・・・今日のクラスのクリスマスパーティーは

     『彼氏彼女いないやつ』

のためのパーティー・・・



風早君が言ってた、『みんなで』って。
このパーティーに参加しようって、
私も、風早君も・・・

それはつまり、私も風早君も『彼氏彼女いないやつ』ってこと・・・


私、ほんとに鈍感。
前にくるみちゃんにも言われたよね。

風早君は優しいから遠回しに言ったんだね。
私達はもう彼氏彼女じゃないんだって。
なのに私、鈍感だから気づかないで、
みんなで一緒に過ごせるのを楽しみにしてたなんて・・・

最近ギクシャクしてるのは感じてた。
気のせいならいいなと思ってたけど・・・感じてた。

突然、終わったらどうしようと思ってた。
そんなの嫌だと思ってた。
でも、そうだね、突然でもないよね。
最近の風早君は一緒にいても嬉しそうでも楽しそうでもない。
そう感じてたのに、終わりにしたくなかった。
私がそう思ってるって気づいてたから、
風早君もはっきり言いづらかったんだよね。
だって風早君は優しいから。

ごめんね鈍感で・・・
よかった、パーティーに行く前に気づくことができて。
さすがにこのまま参加するなんて出来るわけない・・・
だけど参加するって言ってあるから
連絡だけはしないと迷惑かけちゃうよね・・・
6時からだから・・・10分前に連絡入れよう。
幹事は風早君もだけど・・・
さすがに風早君に連絡するのは・・・無理・・・
あやねちゃんにメールして伝えてもらおう・・・
あやねちゃん、いつも甘えてごめんね・・・

今日会わなければこのまま冬休みだし、
きっと私も少しは落ち着くことができるんじゃないかなって・・・

そう、最初から風早君が私を好きになるなんてありえないって・・・
そう思ってたよね・・・
やっぱりそうだったって・・・
それだけのことだよね・・・


************************

今日のクラスのクリスマスパーティーの会場の
カラオケ店へ向かう途中でちづと出会って、
一緒に歩いてたら、メールの着メロがなった。

開いてみたら爽子からで、本文を読んで固まってしまう。

『あやねちゃん、ごめんなさい。
 今日のパーティーに行けなくなりました。
 ちづちゃんと楽しんできてください。
 師匠にもよろしくお伝え下さい。

 申し訳ないのだけど、幹事の方に欠席の旨お伝え下さい。
 よろしくお願いします。』


「ちづ、爽子からこんなメール来たんだけど・・・」
と、携帯をちづに渡して読んでもらう。

「・・・え?来れないの?!今年も~?
 『幹事の方に』って・・・
 風早も幹事だって・・・爽子、知ってるよねー?」

「知らないわけない・・・んだけど、なに?この他人行儀な文面?」


さっき別れた時は、パーティーに来ないなんて言ってなかった。
学校でもケントに『またあとで!』って言ってたよね・・・
私と別れてから何があったんだろう?

カラオケ店に入るとすぐに風早の姿を見つけた。
風早は変わりはないみたい。
うん、風早にもこのメール、そのまま見せてみよう・・・

「あー・・・、幹事の風早サン。」

「や、矢野・・・なんだよ、気持ち悪いな・・・」

「黒沼サンからメール貰って・・・
 幹事の方によろしくってことなので・・・」
と、文面をそのまま見せようと携帯を渡す。

「え?黒沼から?」
不思議そうにしながらも、携帯に目を落とす。

「え?コレ本当に黒沼から?今日、来れないって?
 でも、学校で『じゃあ、後で』って言ったら、『うん。』って、黒沼・・・」

「あたしも学校から一緒に帰ってきたけど、
 その時はまだ来るつもりだったと思うんだけど・・・」

「じゃあ、なんで?」

「その次がこのメールなのよ。
 あたしにもさっぱり訳分かんないわよ。
 ・・・とりあえず、幹事の風早サンに
 黒沼サン欠席の旨お伝えしましたので・・・」

「矢野・・・」

「幹事さんのメアドも知ってるのにね、
 私に幹事さんに伝えてって・・・黒沼サン・・・」

「・・・何が言いたいんだよ・・・」

「風早に会いたくないし、メールもしたくないのかなって・・・
 思ったんだけど・・・違うのかしら?」

「そ、それ・・・黒沼が?」

「いや、だから、『かなって思った』って言ってるでしょ!」

「あ、ああ、そ・・・か・・・」

「そうかもって思う心当たりがあるんですか?風早サン。」

「い、いや、な、ないよ、そんなの・・・
 ってか、その風早サンって呼ぶのやめろよ!なんかイラッと来る!」

「で、いつまでここにいるつもりなのよ!
 明らかに爽子の様子がおかしいってのに!」

「・・・いや、でも・・・俺、幹事だし・・・」

「あー!もう!!
 爽子が大事じゃないの?
 爽子のこと一番に考えてあげないの?
 幹事なんてだれでもできるわよ!
 あたしが男なら風早なんかに爽子を渡さないのに!
 爽子の彼氏はあんたしかできないんじゃないの?
 わかってるの、そこのとこ!!!」

「そんなこと、矢野に言われるまでもない!
 俺だって黒沼を誰かに渡すつもりなんかない!
 俺は俺のできる精一杯で黒沼を大事にしてる!」

「あんたの精一杯なんか知らないわよ!
 肝心なのは爽子が幸せかどうかなの!
 大事にしてたって爽子が幸せだと思ってなきゃ
 大事にしてないのと一緒よ!
 で、風早、爽子の居所に心当たりはないの?」

「え?家に居るんじゃないの?」

「前から今日はクリスマスパーティだって言ってたのに、
 行かないなんて言ったら爽ママにも爽パパにも
 心配かけるじゃない。
 きっと爽子はそんなことしない。
 きっと今日帰る予定の時間までどこかに居るんだと思う。
 そんな時どこに居るか、その心当たりもないの?
 あんた、それでも爽子の彼氏なの?」

「・・・矢野、幹事の方頼む。」

ああ、もう、やっと重い腰を上げたわ!
もう、イライラする!蹴り飛ばしたいわ!!

「なんか連絡あったら電話するけど、ちゃんと見つけんのよ!!」

「当たり前だろ!」

風早っていいやつだとは思うけど、
私だったら絶対彼氏にはしたくない。

************************

店を飛び出したけど、情けないけど心当たりなんて無い。
そういえば最近ほとんど話しもしてなかった。
少し前まで黒沼が考えてること、
だいたい解ってるって思ってた。
今はほとんど解ってないだろうって思える。
電話をかけてみようかと思ったけど、
出てくれないような気がした。
メールなら見てくれるかもしれない・・・
きっと黒沼は見たら返事をくれる。
そんな気がする。

『どうして来れなくなったの?
 今どこにいるの?
 もしかすると外にいる?
 心配だから必ず返事して。』

10分ほどして、着メロが鳴って急いでメールを開いた。

『行きたくなくなっただけです。
 心配しなくて大丈夫です。』

そんな訳ない!
昨年、あんなに来たくてでも来れなかったパーティだよね。
なのに・・・おかしいよ黒沼・・・

『今どこ?』
もう一度きいてみる。
メールを見たのかどうか微妙なタイミングでもう一度メールが来た。

『ずっと鈍感でごめんなさい。
 このメールで最後にします。
 ありがとうございました。』

最後・・・最後って何?俺たちのコト、おしまいって言ってるの?
俺に何も言わずにメールで?
そんなの俺は納得出来ないよ!
黒沼はもう俺を好きじゃなくなったの?
俺はやっぱり黒沼の思う俺とは違ってたのかな?

黒沼の声を聞いて、黒沼が何を思ってるのか知りたいと思って
今度は電話をしてみる。

『・・・電源が入っていないか、電波の届かない・・・』

聞きたかった声とはぜんぜん違う無機質な声が聞こえて
俺はのろのろと携帯をたたんだ。

矢野の言葉通りきっと家には帰ってないだろう。
だからといって一人で何かの店に入って
時間をつぶすとも考えにくい。
なんだか黒沼ってそういうことしそうにない。
なんかただひたすらその辺のベンチとかに座ってそうで。
この寒空の下で、こんなに暗いのに、それでもなんだか・・・
なんだか屋外に居そうな気がしてならない・・・

暗い屋外で女の子が一人で・・・
黒沼に何かあったらどうしよう・・・
何処に居るのかわからないけど、とにかく探さないと!
俺はあてもなく走りだしてひっそり佇む人影を探した。

だけどさすがにそんな探し方で
一人の人が見つけられるほど北幌の街も狭くはない。


俺の思いつく場所に行ってみるしか無い。
その場所に黒沼が居てくれたらいいと思う。
最後にするという黒沼が
居るはずもないといえばそうなんだけど、
でも、居るような気がする・・・居てほしい・・・
だって、ありがとうって言ってくれてるんだから・・・



黒沼との初めてのデートで待ち合わせた場所。
緊張して早く目が覚めちゃって、
家にいても落ち着かなくて、
とりあえず待ち合わせ場所に行って、
随分前から待ってたっけ。

待ってるのが嬉しくて幸せで、
そしたら黒沼も結構早めに来てくれて・・・
俺と同じだって言ってくれたんだ・・・




あの日、俺が座ってた場所が見えた・・・!




少し上向き加減で微笑む黒沼。



見つけた!居てくれた!
俺が居て欲しいって思った場所に!!








「く・・・黒沼っ!!」


俺の方を振り向いた黒沼の表情から微笑みが消えて
もともと大きな目を更に見開いて驚いてる。

「あ・・・あれ?え?・・・風早君?
 そんなはずは・・・ま、まぼろしかな・・・?」

「黒沼!!良かったここにいてくれて!!」

「ほ・・・本物!?
 ・・・ど、どうしたの?・・・クリスマスパーティーは?」

「黒沼・・・、それ本気で言ってるの?
 急に黒沼が来ないとかってメール見せられて、
 何処に居るのか訊いても教えてくれないし、
 その上、最後にするとか言ってくるし・・・
 そんな状況で俺がパーティーなんかに
 参加できるわけ無いじゃん!」

「・・・ごめんなさい・・・
 当日になってしまって・・・
 もう少し早く気づければよかったんだけど・・・
 心配かけるつもりじゃなかったんだけど・・・
 ごめんなさい・・・
 大丈夫だから、もう私、ちゃんと分かったから・・・
 風早君は戻って、パーティーに・・・」

「俺、黒沼の言ってること、
 全然わからないんだけど・・・
 何に気づいたの?
 何が分かったの?
 なんで俺一人で戻んなきゃいけないの?
 なんで黒沼は一緒じゃないんだよ?」

「・・・一緒・・・には行けないよ・・・
 分かったけど・・・平気になるにはちょっと・・・
 まだ・・・まだ時間が要るみたい・・・
 ごめんね・・・放っておいてくれればそのうちきっと・・・」

「何言ってるんだよ!!
 こんなところに黒沼一人置いていけるわけ無いだろ!!」

「風早君が優しいのは知ってるけど・・・
 私にはもう優しくしないで・・・
 ・・・お願い・・・」

そう言って黒沼はすっかり俯いてしまった。
肩が細かく震えているみたいだ・・・
泣いているのかもしれない・・・
抱きしめたいって思うけど・・・
きっと今の黒沼はそれを望んでない・・・

「黒沼・・・黒沼は終わりにしたいの?
 付き合ってみて幻滅した?俺に・・・」

「そ、そんなわけないよ・・・
 私が風早君に幻滅なんてするわけ無いよ・・・
 ・・・風早君が・・・風早君は・・・
 もう・・・終わって・・・るんでしょう?」

「俺が?終わって?」

何がだ?何が終わってるんだ?俺は終わってる?
今日の黒沼の言うことはどうしてこんなにわからないんだろう?

「・・・だって・・・彼氏彼女が・・・居ない人・・・でしょう?」

「・・・え?・・・なに?」

「クラスのクリスマスパーティー・・・
 そういうことなんだって・・・
 今日・・・気がついたの・・・
 ほんとに鈍感で・・・
 ちゃんと風早君はそう言って・・・
 去年・・・そう言って・・・」

「え?去年?・・・あ、彼氏彼女居ない奴って・・・
 確かに言ったけど・・・
 ちょっと待って!
 それは去年のことじゃん!」

「・・・もう、彼氏彼女じゃないんだよって・・・
 そう言われたんだなって・・・
 彼氏彼女はクリスマスは二人で過ごすものだって聞いて、
 おとうさんから風早君はそのつもりはないって言ってたって聞いて、
 私も今、そういう雰囲気じゃないって感じてたし・・・」

「ち、違うよ!!そんなつもりで言ったんじゃない!
 俺は終わってない!終わらせるつもりなんて無い!」

「・・・え?違う・・・の?」

ずっと俯いてた黒沼が目線を上げて俺を見る。
恐る恐る、怯えるような目で俺を見てる。
赤くなった大きな目に涙をいっぱいためて。
泣かせてしまったんだ。
大事な大事な黒沼を。
大切な大切な俺の彼女を。

去年の言葉とか、そんなことより
黒沼にそういう雰囲気じゃないって感じさせてしまったことが
そんな態度で接してしまっていた俺が駄目なんだ。

「ごめん。そんな風に思わせてしまって・・・
 俺、ホントに、黒沼の事になるとどうしていいかわからなくて、
 一番いいと思うことをしてるつもりなのに・・・
 黒沼を泣かせたくなんかなかったのに・・・
 俺・・・

 でも、これだけは分かって欲しい!
 俺、ずっと黒沼の彼氏でいたい!
 ずっと俺の彼女で居て、黒沼!」

「でも・・・
 私の事で悩んでたんじゃないの?
 私の事で風早君を苦しませるくらいなら
 わ、私は彼女じゃなくたって・・・か、構わないから!」

「黒沼に彼女で居てほしいから、
 いろいろ考えちゃって・・・
 でも、俺が考えてたことなんて
 黒沼が居てくれなくちゃ
 なんの意味もないんだよ!
 俺から離れるなんて言わないで、黒沼!」

やっと見つけたのに
そのまま何処かに行ってしまいそうな黒沼を
捕まえて、腕の中に閉じ込めた。
黒沼の身体はすっかり冷えきっていて
このままここにいてはダメだと思う。
話がしたいからと半ば強引に
近くの喫茶店に黒沼を引っ張っていった。

席について勝手にココアをふたつ注文する。
温まりそうだと思ったから・・・

ココアが運ばれてきて、
「温まると思うから飲んで。
 あ、勝手に決めてゴメン。嫌いじゃ無かった?」
というと、黒沼は
「ううん、好きだよ、ありがとう。」と
ふうふうと冷ましながら飲んでくれた。
はあ、やっぱり可愛いどうしよう・・・

カップを置いて一息ついた黒沼が囁くように言う。

「あの・・・後悔してないの?」

「後悔なんてするわけ無いよ。
 黒沼がいいんだよ。
 黒沼でなきゃ駄目なんだ・・・」

俺は別れるつもりなんてもちろん全然なかったけど
・・・黒沼は・・・
黒沼は別れるつもりだったのかな・・・
仕方ないって納得しちゃってた?!

いきなり不安になった。

「・・・黒沼は終わりでもよかったの?」

黒沼はまだ少し涙の残る大きな目を更に見開いて驚いた顔をした。

「・・・終わりにしたくはなかった・・・けど、
 一人では続けられないんだもの・・・
 私が好きなだけじゃ・・・だめなんだもの・・・」

「黒沼!俺、黒沼と付き合ったことを
 終わりにしようと思ったことも、
 後悔したことも、一度もないよ。
 俺だってずっと好きなんだよ、大好きなんだよ。」

やっと、黒沼が少し笑顔を見せてくれた。
そういえば近頃全然見てなかったかもしれない。
そんなことも気づかなかったなんて、
俺ってなんて馬鹿だったんだろう・・・

「・・・俺、今まで付き合ったこととかなかったから
 黒沼と付き合うことになって、
 俺の彼女になってくれて・・・
 嬉しくて浮かれてたけど、
 その後どうすればいいのか知らなくて・・・
 『ずっと大事にする』にはどうすればいいのか解らなくて・・・
 ・・・こんな不安にさせて
 全然大事になんて出来てなかったよな、ゴメン。」

「でも・・・」と言う黒沼からまた笑顔が消えてしまった。

「ん?なに?」と訊いたら、黒沼が予想もしないことを言った。

「風早君は私と居ても・・・楽しくないでしょう?」

「ええっ?なんで?」

「私は鈍感だけど、最近の風早君が
 楽しくなさそうだとは思っていたよ。
 誰と居たって楽しそうに笑ってた風早君が
 私と居るときは楽しくなさそうっていうか、
 苦しそうにさえ見えた。
 それが気のせいなんかじゃなかったんだって
 今日すごく納得できてしまって・・・」

「ち、違うっ!」

「だからもう・・・
 やっぱり一緒に居ないほうがいいんじゃないかな・・・
 風早君は責任感が強いって誰かが言ってたけど、
 一度お付き合いを始めたからって、
 そんなに責任を感じなくっていいんだよ。」

「責任とかじゃなくて・・・・
 黒沼の側に居たいんだ。
 いつでも一緒にいたい。
 離れたくないんだ・・・
 でも、そんなことしたら、
 あんまり近づき過ぎたら、
 俺・・・きっと黒沼を傷つける。
 黒沼が望まないことをしてしまうかもしれない。
 だから、近づき過ぎないように、
 適切な距離を保って、
 傷つけてしまわないように・・・って思って・・・」

「・・・・それが、風早君の悩み・・・だったの?
 やっぱり私が居なければ解決する悩み・・・なのかな?」

「俺さ、気がついたよ・・・
 この悩みって、すごく幸せな悩みだったんだって。
 黒沼との距離を悩めるのは、
 黒沼が居てくれるからなんだって・・・
 黒沼が居なくなったら、
 俺、きっと空っぽになってしまって
 俺じゃなくなっちゃうんじゃないかな・・・」

「そ、そんなこと無いよ。
 風早君は風早君だよ!」

「見かけは俺でも、それは抜け殻だよ。
 俺の胸の奥にもうずっと黒沼は居て、
 居なくなられたりしたら、ぽっかり大きな穴が開いちゃうんだよ。
 それはもう俺じゃない、ただの抜け殻なんだ。」

「そんな・・・」

「ごめん!
 黒沼に誤解させるような態度とってた俺が全部悪いんだけど・・・
 でも、俺、黒沼から離れるなんてもうできないんだ。
 もう一度、俺のこと考え直してくれないかな?
 考えなおして欲しい!!」

「考え直すなんて・・・
 私はずっと風早君のことが好きなんだもの・・・
 嫌いになって離れようって思ったんじゃないんだもの。」

「ありがとう。こんな俺のこと好きで居てくれて。」

「ううん。こちらこそ、私なんかの事、そんなに考えてくれてありがとう。」

「私なんかのことなんて言っちゃ駄目。
 俺のかけがえのない大事な彼女のことなんだから。」

「風早君もこんな俺のことなんて言っちゃ駄目。」

テーブルの上でお互いの手をそっと握り合って気持ちが通うのを感じる。
触れ合うことで分かり合えることもきっとあるんだと気づく。
黒沼の気持ちをちゃんと考えれば、ひとりよがりにならなければ、
黒沼を傷つけたりしないで、距離を縮めることだって出来るんだろう。

黒沼に矢野に凄く心配かけたからと、メールをしてくれるように頼んで、
当分矢野には足向けて寝らんないなと思う。

喫茶店を出ればちょうどクリパがお開きになるくらいの時刻になっていた。
まだまだ街はクリスマスのイルミネーションに溢れてる。

黒沼と手を繋いで微笑み合って眺めれば、
さっきまでと同じ景色なのに不思議に打って変わって綺麗に見えた。
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