3 風早翔太は疾走する。
その日のバイトはもう心ここにあらずって感じで
ヘマをやらかし倒してしまった。
「どーした風早! 具合でも悪いんかー? 」と、何度言われたことか。
まあ、もう、そんなことはどうだっていい!
早く噂の真相を確かめたい。
俺の考えたとおりその幽霊だと言われてるのが黒沼さんだったら
俺のバイトが終わる時間に従業員出入口近くで待ってるってことは、
黒沼さんは俺を追っかけるのをやめたわけじゃないってことになる。
・・・なるよな!!!
やっとバイトが終わって着替えもそこそこに
「おつかれっ! 」っと帰ろうとすれば、ジョーに
「え~!? 待てよ~、一緒に帰ろうよ~!」と引き止められるが
綺麗に無視して従業員出入口から飛び出せば
予想通り、植え込みの陰に黒沼さんを見つけた。
いつも今日ほど早く出てこないから、黒沼さんも油断していたのか
俺に見つかってしまって呆然と立ち尽くしている。
かとおもったら、顔を真っ赤にしてくるっと180度回頭するや否や、
「ひょ~! 」と奇声を発しながらダーッっと走りだした。
「あっ!! 待って!! 」と
言ってみたけど待ってくれないのはわかってる。
俺も必死に走って追いかけるが、とんでもなく早い。
コレが噂の人外な早さか・・・あながち間違いでもない。
でもさすがにずっと走り通すだけの体力はなかったみたいで、
黒沼さんの部屋への近道になる公園を通り抜けようとしたところで
何とか追いついて捕まえることが出来た。
なんとか掴んだ左腕を力任せに引っ張ってこっちを向かせれば
「ひっ! 」と短い悲鳴を上げた。
一瞬目が合ったが直ぐにそらして、うつむき加減になった黒沼さんは
さっきまでの全力疾走の余韻でハアハアと息を乱してる。
どうしようなんかエロいな・・・
まあ、そういう俺も必死に走ってきたから直ぐには息が整わず
向い合ってしばらくふたりでハアハアいってたんだけど・・・
少し息が整ってきて、気がついたんだがこの公園、
とてもこんな夜遅い時間に女の子が一人で
通っていい場所ではない気がする。
さっきの従業員出入口のあたりだって、
裏口だからあんまり明るくないし
あんなところで俺が出てくるのを待ってるなんて
何かあったらどうするんだ!
「黒沼さん! あんなところであんな時間に待ってるなんてやめてよ! 」
と俺が言えば、何故か肩をびくっと震わせて、
「ご、ご、ご、ごめんなさい! ごめんなさい! 」と泣きそうになって謝る。
「私は相変わらず気持ち悪いストーカーで
申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、止められなくて・・・」
「俺を追っかけてくれるのは嬉しいんだけど
何かあったらどうするんだよ、危ないじゃん!
ホントにもう、無防備なんだから・・・
もうちょっと自覚してよね!
黒沼さんは魅力的な女の子なんだって! 」
「は? え? お、怒ってるんじゃないの?
・・・こんな私を心配してくれるなんて
風早くんはいい人過ぎるよ。
そ、それに・・・そんなこと言われたら私なんかでも
うっかり誤解したくなっちゃう・・・」
「・・・誤解って何? 」
あれ・・・?
はっきりとは伝えてないけど、ある程度は黒沼さんも俺の気持ち
分かってくれてるもんだと思ってたけど・・・
「だって・・・まるで風早くんが私のことを
気にかけてくれてるみたいで・・・」
「は・・・」
思わずため息が漏れてしまった。
『気にかける』とか、もうそんな段階とっくに過ぎちゃってるんだけど・・・
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