7 俺と黒沼のひと月はちがうね。
保健室には先生は居なくて、とりあえずベッドに黒沼を寝かせる。
気を失ってる黒沼の足から上履きを脱がせようとして
なんだか酷くいけないことをしているような気がして凄く恥ずかしくなる。
いやいや、何もやましいことなんかない。
靴履いたままじゃベッドにはいれないし!
俺、8年も黒沼と付き合ってきたけど、
黒沼の靴脱がしたのなんて多分、初めてだ・・・
って、何興奮してんだよ、変態かよ、俺!
だけど、黒沼をのぼせて倒れさせちゃうとか・・・
やっぱ急いで付き合おうとしすぎたのかな?
っていうか、罰ゲームかなんかで俺が告白したんだと思ってたとか・・・
俺がそんなことすると思ってたのかな・・・
早く付き合うどころか、俺、嫌われちゃうんじゃないの?
一応そこのところの誤解はとけたとは思うけど・・・
それに、なんで「つきあって下さい!」って、
周りにみんなが居る教室で言っちゃったかなあ・・・
なんかいろいろ後悔してることを、
ちゃんとやり直したかったのに
どう考えても後悔の上塗りしてるよな、俺・・・
もうちょっと落ち着こうよ、いい大人なんだから・・・
ふと、すぐそこで眠る黒沼の顔に目をやれば
綺麗で可愛くて目が離せなくなる。
まだ少し赤みは残ってるけど随分落ち着いたみたいだ。
倒れるほど負担をかけさせちゃったのかと思うと
酷く申し訳なくなって、眠る黒沼に謝った。
「ごめんな、俺が勝手に焦って告白して・・・
罰ゲームだなんて思ってたんならきっと嫌な思いをして、
なのにそれでも優しい返事をくれて・・・
まだまだ黒沼がそんな気持ちじゃないってわかってんのに
調子に乗ってみんなの前で交際申し込んだり
ホント、ごめんな・・・・爽子・・・」
もちろん聞こえてなどいないと思いながら名前を呼んだら、
大きな目がパチッと開いて、
「はい!」
って返事をしていきなりベッドの上で黒沼が上半身を起こした。
「うわっ!ちょっ・・・・そんないきなり起きて大丈夫!?」
「えっ!?わーっ!風早くん、なぜここに?って、ここは!?」
「保健室だよ・・・ごめんな、俺のせいで黒沼、のぼせちゃったみたいで
気を失ったからとりあえずここに連れてきたんだけど・・・」
「教室からここまで風早くんが私を連れて来てくれたの?」
重くて大変だったよね、ごめんなさい。」
「え?全然重くなんか無かったよ!」
「どうやって連れて来・・・あー・・・いいです、聞きたくないです!
迷惑かけてごめんなさい~・・・」
「いや、迷惑かけたのは俺の方・・・
あんなところで交際申し込んでごめん・・・」
「え?・・・あれはホントの事?夢じゃなくて?
今、寝てたから夢だったんだなあ~って凄く納得して・・・」
「夢じゃないよ!
俺、黒沼がほんとに好きで、付き合いたいんだけど・・・
でも、黒沼はまだ俺のことあんま分かってないと思うんだ・・・
だから今度こそ、すぐに答え出さなくていいからって
いいたいトコなんだけど・・・
正直に言うと
いい返事をくれるならすぐに欲しいし
悪い返事するつもりなら、もう一度考えなおして欲しい。
だって、俺、断られても黒沼のこと諦められないもん。」
「え、えと・・・確かに私は風早くんの事、よくは分かってないと思う。
まだ、初めて会ってからひと月足らずだし・・・
でもそれは風早くんも同じでしょ?
私のどこをそんなに好いてもらえるのかすごく不思議で・・・」
「お、俺は・・・道教えてもらった時一目惚れして、
ひと月足らずとは言え、ずっと黒沼だけ見てたから
黒沼が俺を見てたのと、俺が黒沼見てたのは
同じひと月でもちがうと思うよ。」
「・・・で、では、その、もう少し考えさせてもらっていいでしょうか・・・」
「え゛!?悪い返事の方のつもりだった!?」
「いや、いや・・・そうではなくて~・・・」
うーん、これ、俺、ずるいよな。
どっちにしても断るなって言ってるようなもんだ。
まあ、そうなんだけど。
断られたら俺、生きていけないもん。
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