お久しぶりです。ご無沙汰しております。
最近気がついたらひと月すぎてます。
びっくりです。
T.N.Gができましたんでよろしかったらおひとつ・・・

[12回]

　　　

１３　手を繋いで


もともとの俺より感情の起伏が激しいっていうのは考えものだ。
もしかしたら、あんまり黒沼に近づいちゃうと
タガが外れてしまうのも外れやすかったりするのかもしれない。

ちょっと密着して座っただけでキスしたくなっちゃったり
ただでも容易く理性なんか飛んじゃうのに
それ以上ってことになったら
側に寄ったら何してしまうかわからない。
２５の俺は爽子とはすでにまあ、あんなことやこんなことも
済ませてしまってるわけで・・・
なおさら何をしでかすかわからない。

一応、早い時期に付き合い始めるって言う目標は達成できたけど
この先の高校生活を所謂ラブラブに楽しみたいってのは
あくまで高校生らしい清い交際ってやつをしたいわけで
けして２５の俺達と同じ付き合い方を
高１の黒沼と、なんて思ってるわけじゃない。
清い交際をするのにこの感情の起伏の激しい俺は
上手く対応できるんだろうか。

少なくとももう少し慣れるまでは
肉体的接触は避けたほうが良いだろう。
濃い意味での接触はもちろんだが
軽いものでも自分がどうなるかわからないから
極力避けたほうが良いと思う。

せっかく付き合えたのに勿体無いけど
黒沼を傷つけないためには仕方ない。

そう思ってたところに黒沼が
「か、風早くん！一緒に、か、帰りませんか？」
って誘ってくれた。

「え？今日は吉田と矢野は？」

「あ、今日はふたりでお買い物があるらしくて・・・
　あやねちゃんが、『たまには彼氏と帰ったら？』
　なんて言ってくれて・・・。」
そう言いながら『彼氏』っていうのが恥ずかしいのか
頬をぽっと染めて俯く黒沼が困っちゃうくらい可愛い。

「そっか・・・じゃあ、一緒に帰ろっか。」とカバンを肩にかける。


そりゃあ一緒に帰れるのは嬉しいんだけど
これも別に黒沼が望んだとかじゃなくて
吉田たち、ってか主に矢野に気を使われたんだろう。

靴を履き替えて校舎を出て、
思わず黒沼に手を差し伸べようとして思いとどまる。
そうそう、俺達はまだ手を繋いだりなんかしてないんだった。
そうそう、軽い肉体的接触も避けたほうが良いハズだ。

「あ！」
って思わず声に出してしまって、
「どうしたの、風早くん？」
と心配そうに俺の顔を覗き込む黒沼にとりあえず
「ああ、いや、ゴメンなんでもない・・・」
と言いながら思い出していた。

初めて手を繋いだ時、
黒沼から勇気を出して差し出してくれた手を
俺はびっくりして心ならずも払ってしまったんだった。
あの時は黒沼に凄く恥ずかしい思いをさせたと思う。
『嫌いにならないで・・・』なんて言わせてしまって・・・。

あんなことだけは今回は阻止しなくては・・・
流石に黒沼が俺と手を繋ぎたいなんて
まだ思ってるわけ無いとは思うけど
あの時だってそう思ってたんだ、俺は。
俺は黒沼の気持ちなんて全然分かってなくて・・・
俺がグルグル考えてることは
独りよがりになりがちなんだった。

今だって黒沼の気持ち、
あんまわかっちゃいないんだろうけど・・・
黒沼が勇気を振り絞る前に
今度は俺から勇気出して言うんだ！
『手を繋ぎたい。』って

後から考えたらいつも黒沼に頑張らせてしまう事が多くて
俺がどうにかなっちゃうかもとか考えるより
男の俺が、大人の俺が頑張ってみよう。
せっかくやり直してんだから！
どうにかなるったって
ドバって涙が出ちゃうくらいのことなんだし！！

「黒沼！」

「はっ、はい！！」

「手、繋ぎたい！」

「へ？」

「えっと・・・俺と、手を繋いで欲しいんだけど・・・嫌かな？」

「え？え？わ、私と？」

「もちろん黒沼と！」

「い、嫌なんてことないよ・・・でも、人目があるし
　風早くんの名誉が・・・」

「やじゃないなら・・・はい。」

そう言って差し出した右手に
おずおずと黒沼が左手を添えた。

俺がヘラっと笑って黒沼を見たら
嬉しそうに笑う顔がかわいくて・・・

俺、初めていい感じにやり直せた気がする。
これだけでもやり直した意味あったんじゃないかな？