今回、風早くんがウジウジジメジメしております。
それでもよろしければおひとつどうぞー

[7回]

　　　

１２　迷惑なんじゃないかな


俺は黒沼が好きな人に関係ないし、
本人ではありえないとまで言われてしまった。

男子の中では一番近い存在かと思っていたんだけど
とんだ思い違いだったみたいだ。

でも・・・じゃあ一体誰なんだろう？

黒沼が男子と居るところなんて殆ど見ないけど。
野崎と御子柴くらいしか・・・
このふたりではないってことだし。
遠くから見つめてるだけとか？って
ふと黒沼の席の方に目をやって愕然とする。

黒沼の席は最近仲良くなった女子に囲まれてるなと思ってたけど
そういえば隣は男子じゃないか！?
なんか妙に馴染んでてあんま気にしてなかった。
黒沼と二人で楽しげに会話してるのは三浦ってやつだ。
もしかしてアイツの事なのかな、黒沼の好きな人・・・
『何が遠くから見つめるだけ』だ！
めちゃめちゃ近くに居るんじゃないか！！

俺は、席が離れてから教室ではほとんど話せなくなって
少しでも一緒にいたいなんて思って野崎の手伝いに混ぜてもらって
最近は一応あのグループのメンバーっぽくもなってんだけど
あそこですら黒沼とろくに話せてない気がする。
もしかすると俺って黒沼に避けられてる？

好きな奴が居るなら分かる気もする。
特別好きってわけでもない男に親しげにされて
想ってる相手に誤解とかされたくはないだろうし。

俺が少しでも黒沼と関わりを持ちたいと思ってることが
黒沼には迷惑なのかもしれない。
でも、やっぱり俺は黒沼が好きで
黒沼が三浦を好きだとしても諦めるなんて出来そうもない。

三浦もきっと黒沼が好きだろう。

黒沼は貞子なんて呼ばれたりして
黒沼のことを知らない奴らからは
ちょっと避けられたりとかするけど
少しでもどういう娘か分かれば
きっと誰でも黒沼のこと好きになると思う。

三浦はあれだけ喋ってんだから
黒沼がどんだけいい娘かもう気付いてるだろう。
それで黒沼も三浦が好きなんだったら
それって両想いってやつじゃん。

ますます俺が黒沼と関わろうとするのは
迷惑以外の何物でもないんじゃ・・・

「風早くん！」って呼びかけられて
「はっ、はい！！」なんて柄にもない返事して振り向いたら
佐倉がにこやかに立っていた。

「今日も来れるかなあ野崎くんのトコ・・・。」と佐倉。

「ああ・・・」と曖昧な返事をする。

「爽子ちゃんも来るよ！メシスタントで！」と魅惑の言葉で誘う。
黒沼と学校以外で会える。
しかも手料理付き・・・
行きたいのはやまやまだけど・・・

「ホントにいいのかなあ・・・
　俺、あんま役に立ってないと思うんだけど
　晩ごはんまでご馳走になって悪いんじゃない？」

「何言ってるの？野崎くん風早くんにアドバイスもらって
　凄く助かるって言ってたよ。」

「野崎はそうかもしれないけど
　黒沼は作る量が増えて大変なんじゃないかな？」

「へ？爽子ちゃんは風早くんが来てくれたら
　嬉しいに決まってるじゃない！」

「そうなのかなあ・・・
　俺なんかが近くにいたら、その黒沼が好きだって人に
　変に思われたりしないかな、大丈夫なの？」

「え？え？・・・それは絶対大丈夫なんだけどな！」

「あ、そう・・なの？・・・だったら俺は全然いいんだけど。」

「・・・風早くんって・・・意外と鈍感なんだね！」と
笑いながら去っていく佐倉を見送りながら
何に対して鈍感だと言われたのかさっぱり分からなくて
それが分かんないから鈍感だって言われたんだろうかと
なんかわからないまま納得する。

こうして黒沼と席の近い佐倉と普通に喋れてるってことは
最近黒沼と会話がないのは
席が離れてるせいだけじゃないんだと思う。
黒沼から話しかけられることってないんだな。
それを言ったら俺からも話しかけてないのかも。
三浦のことに気付いてなおさら話しかけづらく思うし・・・