9 バイトを辞めた思わぬ余波が襲ってきた。
そして、夕方のバイトの最後の一回を終えた翌日のこと。
大学に行ったらまた、朝からいきなりジョーに問い詰められる。
「風早!おまえ、バイト辞めたって、ほんと!?」
「あー、ジョー、おはよー。
相変わらずよく知ってるなあ。」
「俺さあ、びっくりさせてやろうと思ってお前のバイト先に面接行ってさ。
採用になったから、お前と一緒にバイトできるって楽しみにしてたのに~。
お前が辞めちゃったらなんにもなんないじゃん!」
「へー、そうだったんだ。あそこは皆いい人で楽しい職場だから
バイト楽しめると思うよ。いい経験にもなると思う。がんばれよ。」
「だから、俺は風早と一緒にバイトしたかったんだよ~。
なんだよ、同棲とかするなら金要るだろう?何辞めてんだよ~。」
「俺はバイトするより彼女と一緒にいたいの!
去年頑張ったから貯金も結構あるし、深夜バイトは続けるし。
彼女も生活費出してくれるって言ってるし、何も問題ないの!」
「えーー!?バイト辞めて、貯金食いつぶしながら、
彼女に生活費出してもらって生活すんの!?
お、お前・・・ヒモ!?」
「ち、違う!!彼女に出してもらわなくても、深夜バイトもあるから
一年は二人で十分食っていけるんだよ!!
彼女がどうしても出すって言うから一応出してもらうことになったけど!」
「一年って、その先はどうすんの?」
「また必要ならバイト始めるさ。」
「良い職場だって言うなら続けとけばよかったじゃん。
風早ってそんな刹那主義だったっけ。」
「『俺達のことは一切詮索するな!!』って言ったよね。」
そう言ったら、ジョーは口を噤んだけど
ジョーの後ろからまた別の人が俺の名を呼んだ。
「風早!いつの間にバイト辞めるってことになってたの?
私知らなくって!昨日、風早が帰ってから聞いてびっくりして!
なんで?私達うまくいってたじゃない、なのにどうして?」
「えっ、えっ・・・?だ、誰?なに?修羅場?!」
「修羅場ってなんだよ・・・彼女は胡桃沢さん。
この大学の学生で、バイト先もたまたま一緒だったんだ。
――胡桃沢、俺、別にバイト先に不満があって辞めたわけじゃないよ。
今まで楽しくバイトさせてもらって、
あの店にもあそこのメンバーにも感謝してる。
でも辞める理由は一身上の都合ってことで許してよ。」
「え?胡桃沢さんもあの店でバイトしてんの?」
「あ、そうだ、胡桃沢。
こいつ、城ノ内って言って俺の友達なんだけど、
今度あの店でバイトすることになったらしいからよろしくな。」
「え?そんなことはどうでもいいのよ!風早っ!!
風早はバイト辞めたらもう私と会わなくなって・・・それで平気なの?」
「ー・・・そうだな、バイト辞めたらバイト仲間とは会わなくなるなあ。
でも胡桃沢とは大学同じだから今日みたいに会うこともあるんじゃないか?」
「それは・・・あえて会わなくても平気ってことなのね・・・」
「馬鹿!風早!胡桃沢さんって・・・お前のこと好きなんじゃねえの?!」
「え?いや、俺、胡桃沢にそんなこと言われたこと無いし。」
「え、いや、そこは、察しろよ!」
「うーん・・・俺には無理。察したところで答えられないし。」
「どうして答えられないの?風早、私の事嫌い?」
「胡桃沢のことはいいやつだと思ってるし、嫌いなんかじゃないよ。
でも、そういう意味で好きだっていうんだったら、それには答えられない。
俺、好きな子がいるんだ。
他の子のこと、その子以上に想えないんだ、ごめんな。」
「――風早、楽しそうにバイトしてたから4年まで続けるんだろうって思ってて、
4年までには私の事好きになってもらう自信あったのにな―・・・」
「もったいねー・・・風早ー、胡桃沢さんすっげえ可愛いのに~」
「そうだよ!もう二度とこんな可愛い子目の前に現れないんだからね!!」
「あ、あの、胡桃沢さん!俺、今日からバイトなんで、よろしくお願いします!」
「なーんで風早の友達を私がよろしくしなきゃなんないのよ!!!」
「えー!よろしくしてくんないの~!」
嘆くジョーを振り返りもせず立ち去る胡桃沢・・・
胡桃沢が・・・俺を好きだったなんて全然気づかなかった。
楽しくバイトしてたそのメンバーのうちの一人としか思ってなかった。
俺って・・・もしかすると、鈍感・・・なのかな?
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