10 爽子がいればすっごく充実した夏休みになりそう、いや、絶対になる!
「爽子。明日から朝、起こしてくれなくていいからね。」
いつも通り8時に可愛く起こしてもらって
そういえば言うの忘れてたなと思う。
「え?学校に行かなくていいの?」
「うん。夏季休暇だから。
今日はいつもよりゆっくり朝ごはん食べれるよ。」
そう、夏休みだ。学校に行かなくていい。
つまり、朝から晩まで爽子と一緒に居られる!
こんなに嬉しいことはない!
俺はそうなんだけど、爽子は大丈夫だろうか?
さすがに毎日ずーっと一緒とか息詰まっちゃうんじゃ・・・
俺は好きで一緒にいるんだから嬉しいけど、
爽子はそうじゃないし・・・
俺、わりと人から嫌われるってこと無い方だし、嫌われてはいないと思う。
むしろ爽子を見てると俺のこと好きなんじゃないだろうかと度々思う。
でも、確認するのが怖い。
確認することに意味が無い気もする。
俺の魂を奪うことが目的である以上、
「好きじゃない」ということはデメリットしかない。
ある程度好きなら好きだと言っても嘘じゃない。
恋人同士といえる程好きじゃなかったとしても。
その程度の男とこの狭い部屋でずーっと一緒なのはやっぱり辛いだろう。
でも俺は一緒にいたい・・・ワガママかな・・・
そうだ、この狭い部屋を出ればいいかもしれない。
「休みだからさ、どこかに出かけようか?」
「え?お出かけ!!どこに?!」
爽子の瞳が嬉しそうにキラキラ光る。俺フィルターかもしんないけど。
やっぱり出かけるのが正解のようだ。
「行き先までまだ考えてないんだけど・・・爽子が行きたいとこあったら
可能な限り連れて行くよ。夏休みは長いんだ!」
「いつまでお休みなの?」
「9月初旬まで!」
「そんなに!長いんだね~!」
あー、やっぱり長いなーって思うよね。
「じゃあ、いっぱい色んな所に行けるね!楽しみだな~!
実は私、この部屋とあのスーパー以外殆ど行ったことがなくて・・・
ネットで見て行ってみたいところはいろいろあるんだけど、
一人で行って見る勇気はなくって・・・」
「・・・爽子ってネット使えるの?」
「うん。少しだけ・・・これで。」とスマホを取り出した。
「スマホ持ってたんだ・・・知らなかった・・・」
「これも、魔界の支給で・・・
ネットで調べ物する以外使うこと無いんだけどね。」
「そんなことないよ!離れてる時、電話やメールできるじゃん。
それにこれから出かける時なんかは、はぐれたりしても
すぐ連絡付けられるし安心だよね。
・・・あ、爽子が俺に番号とアドレス教えてくれたらだけど・・・」
「あ、翔太くんも持ってるの?
私からも電話やメール、翔太くんのに出来る様になるのかな?
番号とアドレスを教えるにはどうしたらいいのかな?」
「それ、貸してくれたら俺がやるよ。
・・・一緒に暮らしてもう3ヶ月になろうっていうのに
まだまだ爽子のこと、知らないことばっかりだな。
ちょっとさ、色々訊いてもいいかな、爽子のこと。」
「わわ・・・なんか怖いー。
こ、答えられることには答えます。
答えられないこともあると思います・・・けど。」
「うん。分かってるよ。答えられることだけでいいから。
――そーだな、まず・・・爽子っていくつなの?」
「19歳です。こちらの世界で言うと、翔太くんと同じ学年だね。
私は12月31日生まれなので。」
「誕生日大晦日なんだー。
・・・コレも訊いてみたかったんだけどさ、爽子はどうして人間になりたいの?
人間になってなにがしたいの?」
「そ、それは・・・今はお答えできません。
でも、出来れば、私がこの試練に合格して人間になることができたら、
その時に、まだその答えを知りたいと思ってくれるなら、
もう一度訊いてくれませんか?」
「・・・分かった。じゃあ、来年の俺の誕生日にもう一度聞くよ。
んー、じゃあ、これは答えてくれるかな・・・
爽子は人間コースを選んだって言ってたけど、
他に何コースがあったの?」
「大きく3つのコースに分かれててね、『天使』と『人間』と『悪魔』を選べるの。
普通に試練や資格の試験を受けなければ悪魔になるんだけど、
私は天使と人間とで結構迷ってて、とりあえず両方にエントリーしてたの。
どちらかと言うと人間になりたかったんだけど、
この人間コースの試練が私にはとても難題に思えて・・・
でも今は挑戦してみてよかったって思ってるよ、翔太くんのおかげ!」
「あのさ・・・絶対合格するよ。俺が保証する!」
「そ、そうかな?魂の10%を占めるって結構大変なんじゃないかなって、
最近思ってるんだけど・・・」
「ターゲットが俺なら、爽子は楽勝だよ。
何度も何度も言うけどさ、俺は爽子が本当に大好きなんだからね。」
「あ、悪魔なのに?」
俺が好きだと言うといつも赤くなってうつむくけど、
今日の爽子の照れ方は今までよりちょっとだけ
俺の大好きが通じたような、そんな気がした。
「最初に会った時から爽子はずっと悪魔なんだから、
その爽子を好きなんだから関係ないでしょ?」
嬉しそうに笑う爽子が一段と可愛くてちょっと焦って次の言葉を探した。
「――そーだ、もうひとつ訊いとかないと!」
「え?な、なにかな?」
「ネットで見た行きたいとこって、まず一つ目はどこ?」
「あ・・・いいのかな・・・翔太くんと行ってみたいなって思ってたんだけど・・・」
「うん、言ってみて!余程遠くとかじゃなければ行ってみよう!」
「ハンバーガーショップ・・・なんだけど・・・」
「え?」
「だ、駄目かな?」
「あはは・・・駄目なわけ無いよ!それなら歩いても15分くらいで行けるよ。
じゃあさ、今日のお昼はハンバーガーにしよっか!!」
今日はとりあえずハンバーガーショップ。
明日からは何処に行きたいって言ってくれるんだろう。
「じゃ、アドレス帳に俺のアドレス入れといたからね。」
って、スマホを返してこっそりニヤける。
爽子の電話番号とメアド、ゲットだぜ!
一緒に住んでるのにそんなことで何ニヤけてんだとか言うな!
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