1 独立して一人で暮らす為に格安の部屋を探したら・・・。
「高校卒業したら店を継ぐ。」と言ったら殴られた。
「俺が作ったものをそのまま受け継ごうだなんて虫が良すぎるんだ。」
そう言われてまた一から考えなおした。
俺なりに一生懸命考えた。
結構考えに考えて、大学に進学しようと結論を出した。
「大学受けようと思ってるんだ。」と言ったら、
「ま――たおまえはそんな甘っちょろい事を~~~!!!」
あの親父にはきっとそんなこと言われると思ってた。
俺なりに熟考しての結論だとはいえ、
少し前に言ってたことと180度違うことを言ってるんだから
親父からしたら、店が継げないなら
とりあえず大学行っとこうと思ったんだろうと
思われるんだろうなって思ってた。
きっと大学進学以外の選択肢を選んでも
なんだって甘っちょろいって言うんだろう。
親父は俺がやる事なす事全部気に入らないんだ。
「奨学金受けるから、親父に負担はかけない。
俺は自分の力で大学に行く。」
「そういうことを言ってるんじゃない!」
「高校卒業したら、この家を出て一人でやっていく。」
「勝手にしろ!!」
勝手にしろと言われたから、四月から一人で住んで大学に行くことにした。
とりあえず経済的に親父の世話にならずにやってみたかったんだ。
それほど成績も悪いほうじゃなかったし、意地になって必死に勉強して、
大学には推薦で合格できた。
母ちゃんやとたには、連絡するし居場所も言っていくから家出じゃない。
何かあったらすぐ帰ってくるから連絡してとくれぐれも言ってある。
大学はそんなに遠くないところにした。
頑張れば実家から通えなくもない。
だけど、親父の手のひらの上から外れたところで生きてみたかったんだ。
合格発表のあとはこれからのために
大学の近くでバイトをはじめ、安い部屋を探した。
探したけど、どこも似たり寄ったりで、
もう不動産屋を10軒ばかり回ったのに安いとこなんかない。
でも家賃はずっとついて回るから妥協はできない。
「どんなとこでも構わないから3万代でないでしょうか?」と
疲れ果てて担当してくれた人に泣きついてみた。
「本当にどんなとこでもいいんですか?」
「えっ!?なんかあるんですか?曰くつきってやつですか?
この際、我慢します!駄目ならその時また考えます!」
「バストイレ付き1Kで2万円ってのがあるにはあるんですがね・・・」
「に、2万!?幽霊とか出るんですか?」
「聞いた話では幽霊じゃなくてね、座敷童子らしいんですけどね。」
「座敷童子?・・・って妖怪でしたっけ?」
「私もあんまり詳しくないんですけどね、精霊的なもので、
家に住み着くと家が栄えるとか言うのらしいんですけど、
賃貸の一部屋に住み着くとか聞いたこと無いんで、
本当にそれなのかは怪しいんですけどねえ。」
「ふーん、なんかイイやつみたいじゃないですか。そこにします。」
「いいんですか?そんなこと言って・・・
住み始めるけど、皆さん見た目が怖いって
割とすぐまた引っ越しちゃうんですよね・・・。」
「どういうふうに怖いんですか?」
「長い真っ直ぐな黒髪の和服の女の子で、なんか暗くて怖いんだそうですよ。」
「え?それだけ?何かされるとかでもなくて?」
「はあ、存在が怖いんだって前に出ていった人は言ってました。」
「とりあえず、そこ、紹介してもらえますか?」
ということで、早速、担当の人と家主さんのところへ向かった。