珍しく一気に投稿です。５話で完結です。
二人共同じ大学に通う大学生で
爽子ちゃんがシンガーソングライターと言う謎設定です。
１　黒沼爽子は憧憬する。
２　風早翔太は失言する。
３　風早翔太は特攻する。
４　黒沼爽子は白状する。
５　風早翔太は脱力する。

[7回]

　　　

４　黒沼爽子は白状する。


「ご、ごめんね。私は、その、貴方のことよく知ってるけど、貴方にとったら私は
　バイト先にちょっとよく来る変な女ってだけだよね。
　今日、ちょっと話をしたからって知り合いみたいな気になって図々しいよね・・・
　名前は・・・学生証見たのなら知ってると思うんだけど、私同じ大学だから・・・
　貴方は人気者だから名前くらいは誰でも知ってるんだよ。
　でも、知らない女にいきなり君付けで名前呼ばれたりしたくないよね。
　ごめんなさい、馴れ馴れしくて・・・」と、だんだん涙が溢れて、涙声になってくる。

「わっ！いや、ごめん！！
　別に俺怒ってるわけじゃないし、名前呼ばれたくないわけでもないよ！！
　それに、黒沼さんのこと変な女だなんて全然思ってないし！！
　ただ、その、不用心っていうか、無防備っていうか、俺なんかを簡単に
　部屋に上げたりしちゃダメなんじゃないかって思っただけで！」

私が泣いたりしたものだから風早くんにこんなことを言わせてしまった・・・

「『俺なんか』じゃないよ・・・
　か、風早くんじゃなかったら、今日の嬉しい気持ちで焼いたクッキー、
　食べて欲しいなんて思わないよ・・・風早くんだから・・・」

「え・・・なんでろくに話したこともない俺のこと、そんなふうに言ってくれるの？」

「・・・今日まで話したことはなかったけど、私は風早くんのこと知ってるよ。
　名前だけじゃなくて、どの講義とってるかとか、お友達とどんな話してるかとか、
　お昼によく食べてる学食のメニューとか、大体何曜日はバイトしてるとか、
　何処に住んでるとか、お誕生日とか、血液型とか・・・その、いろいろと・・・」

「・・・そうなんだ・・・」

「ごめんね・・・学校で見てから、風早くんのこと、なんか気になって・・・
　少し離れたところから見てたり、ちょっと後ろをついて行ってみたり、
　迷惑にならないようにって、あんまり近い距離にならないようには
　してたつもりなんだけど・・・そういう問題じゃないよね。
　私みたいなのが、そんなことしてるってだけで迷惑だよね。
　やっぱり、気持ち悪いよね、こんな私・・・・」

「うーん・・・だったら、俺もちょっと気持ち悪いかも。」

「ええっ？！風早くんが気持ち悪い？
　そんなこと無いよ！風早くんは爽やかで凄くいい人でかっこいいよ！！」

「いや、俺、結構気持ち悪いよ。
　黒沼さんがそんなふうに言うのは俺の外面のイイトコだけ見てるからだよ。」

「そんなこと・・・」

「だって俺、黒沼さんがあのファミレスにいつも３時頃来て、６時位に帰るって
　知ってるし、一ヶ月くらいチョコパを続けて頼んでるって知ってるし、
　その前は二ヶ月位アイスクリームパンケーキだったことも知ってる。
　それに、名前がシンガーソングライターの「爽子」と同じ爽子だって知ってるし、
　「爽子」の二曲目のタイトルが「アイスクリームパンケーキ」だってことも知ってるし、
　近く発売される新曲が「チョコレートパフェ」だってことも知ってるよ。」

「え？ええええ～！！？」

「俺、「爽子」の曲、大好きなんだ。
　俺の考えが間違ってなければ、黒沼さん、あの「爽子」なんでしょ？
　あの歌詞って、具体的に誰かのこと想って書いてるの？」

「か、か、か、か、風早くん本人に聴かれるなんて、思いもしなくって・・・
　恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい・・・・」

「俺さあ、こんなふうに想ってもらえたら男として幸せだろうなあって思いながら
　いつも「爽子」の曲、聴いてたよ。
　で、もしかしたらなんだけど・・・俺のこと想って書いてくれてたり・・・した？」

「うわー、そうです、そうなんです、ごめんなさーい！！」

こんなに風早くんにいろんなことがバレバレだったなんて・・・
たしかに特別隠していたわけじゃないけども・・・