11 いつも一緒に居たいけど、邪な気持ちで言ってるんじゃない・・・んだよ。
しばらく黙って考え事をしていた俺がいきなり勢い良く顔を上げて、
「っ・・・黒沼!」
って、呼びかけたもんだから、少し驚きながらも、
どうやら『どうして?』の答えを聞けるのではないと察したようで、
「えっ?!な、何かな・・・」と大きな目をさらに見開いて応えてくれる。
「黒沼、俺に気を使ってるの?」と、訊いてみれば、
物凄く不思議なことを訊かれたとばかりに、
「・・・ごめんね、私、かなりやりたい放題で気を使った覚えが全然ないんだけど?」
と返って来て俺としては幾分ホッとする。
多分黒沼にはストレートに訊いたほうがいいだろうと、
「だって、黒沼、俺が風呂からあがるといつも居なくなってるよね。
もしかすると、夜になると部屋に居ないように気を使ってるんじゃないの?」
と訊いてみたら、やっぱり物凄く不思議そうに、質問の意図を探りながら、
でもちゃんと答えようとしてくれる。
「・・・お風呂に入るということは、その後はもうお休みになるんでしょう?」
「う、うん、まあ、そうだけど?」
「ですから、私も床に入らせて頂いているのですが・・・」
「だから、その、トコってドコ?!」
「・・・ココですが?」と、俺の部屋の押し入れを指さす。
「ええっ?!黒沼今まで押入れで寝てたの?」
「この変化が起こる前からずっとそうだったんだけど・・・
というか、風早くんがここに住む前に、
他の人がここに住んでいた時からずっとそうだったんだけど・・・ダメでした?」
「だって、押し入れは人が入るトコじゃないでしょ?」
「私、人じゃないですし。」
「なんで部屋で寝ないの?」
「座敷童子が人前で寝るなんて有り得ません。」
「俺が部屋で寝てるのに、黒沼が押入れだなんて・・・
なんか俺が黒沼のこと虐げてるみたいで居た堪れないんだけど・・・」
「そ、そんなこと・・・そんなふうに思ってもらうのは・・・
それはそれで申し訳ないっていうか・・・
でも、今までからずっと押入れだったので、
押し入れが落ち着くんだけどな・・・」
「黒沼・・・座敷童子がって言うけどさ
・・・黒沼はもう人と何も変わらないじゃん。」
「えっ!?ということは・・・押し入れに入ってはダメ・・・ですか?」
「えっと・・・そうだね、うん、ダメだと思う。」
「ということは、私もお部屋で寝ることに?
・・・でもそれは・・・困りませんか?」
「え・・・やっぱり恥ずかしい?」
「ん?えっと・・・お部屋、狭くなっちゃいますよね?」
「・・・いくらこの部屋が狭いって言っても、ふたり寝るくらい大丈夫だよ!」
「そ・・・そうですか?・・・じゃあ、あの・・・風早くんさえ良ければ
今夜からお部屋で寝させてもらいますね。」
「うん、そうして!!」
って、黒沼も部屋で寝るようにしてくれてよかったって、
この時は本当にそう思ってたんだけど、
狭い部屋に布団2つ並んでることの破壊力に
その夜、俺は改めて気づくことになる。
っていうか、狭い部屋で男女が普通にふたりで住むとか
そりゃマズイだろうとか思ってたはずなのに
なんで俺から『部屋で一緒に寝ようよ。』というふうに
話を持って行ってしまったのか・・・
断じて・・・その・・・邪な気持ちがあったわけでは・・・無いんだよ・・・。
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