2 風早翔太は暗然とする。
あれから俺は、学校で黒沼さんが
いつ声をかけてくれるだろうかと結構浮かれていた。
俺の後つけたりしてるなんて言ってたから、
時々周りを見回したりしているけど
まだ一度も学校で黒沼さんを見かけたことがない。
・・・もしかすると黒沼さんは俺を追っかけるのを
やめてしまったのかもしれない。
あの後、バイト先にも来なくなってしまったし。
「・・・・・ありがとうございます。・・・これからも来させてもらいます。」
確かに黒沼さんはそう言っていたのに
あの日を境にぱったりと、だ。
いきなり部屋に押しかけたりしたのがいけなかったのか・・・
遠巻きに見ていた俺には好意を抱いてくれていたようだったけど、
実際話してみたら黒沼さんが思っていた俺とは違ったのかもしれない。
俺が黒沼さんのこと事細かく把握してるなんて気持ちの悪いことを
暴露してしまったんだから当然といえば当然だ。
「両思いってことだよな。
じゃあ、将来的には、付き合うとか、彼氏彼女になるとか、
ゆくゆくは恋人同士になれたりするのかもしれない。
やっぱりそれにはまず、告白してお付き合いしましょうということに・・・」
なんて浮かれていたのに、もう会うことも無くなってしまったなんて。
確かに俺は彼女の部屋を知ってるし、
「風早くんならいつでも大歓迎です!」なんて言ってもらったんだから
部屋を訪ねればいいのかもしれないが、
「本気にしてまた来るなんて!」みたいな態度取られたらって思ったら、
とても再び部屋を訪ねる勇気なんか出るわけもない。
そんなことを考えながらキャンパス内を歩いていたら、
「風早~!今日風早もバイトだよな!一緒に行こうぜ~!!」
と同じファミレスでバイトしてるジョーが後ろから背中を
力任せにどついてくるから、軽く咳き込んでしまう。
「なーんか風早ここんとこ元気ないよなあ・・・
あ、もしかして噂のアレか?風早も見ちゃったのか?」
「は?噂のアレってなんのことだよ?」と
ちょっと涙目になりながら、さほど興味もないけど訊いてみる。
「知らねえの、風早?あのファミレスの従業員出入口の近くにさ・・・
――出るんだよお・・・髪の長い女の幽霊が・・・!」
「・・・幽霊?俺、今まで生きてきて
一回もそーゆーの見たこと無いから。」
「いやー、マジマジ!結構何人も見ちゃってるらしいんだよ、ホントに!
長い真っ直ぐな黒髪の青白い顔したちょっと綺麗な女らしい。
恨めしげに従業員出入口の方をじっと見つめてて、
うっかり目が合ったら人外な早さで走り去っていくっていう話でさ・・・」
「・・・長い真っ直ぐな黒髪の青白い顔したちょっと綺麗な女・・・?」
「怖え~だろ~・・・」
「ちょ・・・ジョー、その話、いつ?何曜日の何時頃の話?!」
「え?なに?なに急に食いついてんの風早・・・
――曜日は分かんねえけど、
時間は俺達が上がる11時頃だって聞いたけど・・・」
「ホ、ホントに!?」
それって・・・それって、黒沼さんなんじゃないの!?
黒沼さんだよね!黒沼さんであってくれっ!!!
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