2 風早翔太は牽制する
ふたり赤い顔して手を繋ぐでもなく、間に人一人位の距離をとって
それでもどう見ても一緒に登校してきましたって感じの俺達は
いかにも付き合いたての恋人同士に見えてるんじゃないかと思う。
空いているベンチを見つけて、爽子とふたりで腰掛ける。
間に誰か座るのはちょっと無理くらいの少しの隙間をあけて座った。
だいたいこの辺りに座ってると何処からともなくジョーが
俺を見つけて走ってくるんだ。
「かーぜーはーやー!!」
ほら、やっぱり。
「なに女の子とふたりでベンチ座ったりしてんだよ!!
もしかしていつの間にか風早が彼女作ってたり!?
そんなの聞いてないぞー、おれー!!!
・・・ってか、あれ?貞子じゃん!!」
「えっ!?何、爽子って・・・!」
俺、さっき呼び始めたばっかなんだけど、
ジョーすでに下の名前呼び捨て!?
「あー、黒沼のあだ名、『貞子』っていうんだ。
俺達のゼミじゃみんなそう呼んでんの。
ほら、リングの貞子に似てんじゃん、髪型とかさ~。」
あ、『貞子』か・・・爽子じゃなくて・・・びっくりした・・・
「あ、おはよう。城之内くん。
そうそう、みんなあだ名で呼んでくれるんだよ~。うれしいな~。」
「え!?うれしいの?」
「だって、あだ名つけてもらえるなんて仲良しって感じがして・・・」
「でも、リングの貞子って・・・そんなの、似てないよ!」
「似、似てないかな?」
「似てた方がいいの?!」
「ちょ!!そんなことより、なんでふたりでベンチに座ってんだよ~。」
「・・・ジョーに紹介しようと思ってさ・・・」
「えー?貞子を?ゼミ一緒だから知ってるけど?」
そう言いながら俺と爽子の間に座ろうとする。
どー見てもスペース的に無理があるだろ!って思ってたら
爽子が少し横にずれてくれて、ジョーが真ん中に収まった。
なんでだよっ!
気を取り直して・・・
「黒沼爽子さん、俺の彼女だから。」
目一杯落ち着いた声で
ハッキリきっぱり間違いなく伝わるように言った。
「「ええええ~~~」」
指揮者がタクト振ってましたか?って感じで二人ピッタリ息を合わせて驚く。
って、なんで爽子が驚く!?
「な、何の冗談?!貞子が風早の彼女!?
ってか、貞子もビックリしてんじゃん!!」
「え!?ちょ・・・わかってるよね・・・
俺が大好きだって言ったら・・・えっと・・・幸せだって・・・言ったよね!?」
「か・・・かのじょ・・・彼女・・・夢・・・かな、これ・・・」
「わっ!・・・気絶しないで!・・・それと、夢でもないから!!」
って、あー・・・俺ってバッカじゃないの?
ジョーに気を取られすぎて肝心なことちゃんと伝えてないよな・・・
「ご、ごめん!!・・・・
『わかってるよね。』じゃ・・・ないよな・・・」
「ちょ・・・風早・・・・」
「――俺とつきあって下さい!
ずっと大事にするから。」
「――・・・ハ・・・ハイ・・・・!」
――よかった!!これでもう、『彼女』って言ってもビックリされない!
「ちょー・・・風早~、俺を挟んだまま朝っぱらから告白とか・・・
周りが見えてないにも程が有るんじゃね~・・・」
「うわっ!!ジョー、居たんだ!!」
「『居たんだ!!』じゃねーよ!ついさっき会話したじゃん!!
そもそも俺に紹介するんじゃなかったのかよ~!
いや、まあ、してもらったけど・・・」
「あー・・・、ちょっと、いろいろ前後しちゃったけど、
そーゆー訳だから、その・・・
今後、爽子の部屋訪ねたりしないでくれるかな!!」
「・・・・なあんだよ、風早!!結局それが言いたかったんだ。
ってか、貞子、そんなことまで風早に報告してんの?
別にそんな大層なことじゃねーんだけど・・・
たまたま近く歩いてる時に、『あー、ここだって言ってたなー。』って思って、
『そーだ、あの事訊いてみよ!』って行ってみただけなんだけど・・・」
「そんな気軽に女の子の家、突然訪ねるなよ!!」
「え?そんなの俺、貞子に限ったことじゃねーし。」
「他の娘の家にも突撃してんのか!?」
「男女問わず家知ってる奴のトコは一回は行ってるな。
まあ、一番行ってるのは、当然風早んちだけどな!」
「だから、俺んトコにだって来る前に
電話の一本くらい掛けろっていっつも言ってんじゃん!」
「別にいーんだよ。居なかったら出なおすだけだし~。」
「相手の都合も考えろって言ってんの!」
「まあ、要するに風早が言いたいのはもう貞子んちには行くなって事だろ?」
「――そ・・・そーだけど・・・。
あと、俺んち来る時も必ず電話してから来て!」
「あ・・・貞子が来てることもあるってこと?」
「――いや、その、そーゆーことじゃなくて!!」
「あ、あの!!!私まだ一回しか風早くんのお家にお邪魔したことはなくって!!」
「え?そーなの?彼女なのに?
――あー、そっか、まださっきなったトコだったっけ!
じゃあ、これからガンガン部屋に連れ込んで?」
「そーゆー言い方をするな!」
「え・・・いいのかなあ・・・また風早くんのお部屋にお邪魔しても・・・。
私、ご飯とか作りに行ったりとか・・・してみたいな!」
「・・・え・・・えっ!?マジでっ!?」
「ご、ご迷惑でなければ・・・」
「迷惑なわけ・・・・・ないじゃないかぁぁぁぁ・・・」
なんかすっごい幸せな申し出に感動してたら、
ジョーが横から(ってか真ん中から)・・・
「え!!貞子の手料理!?俺も行ってもいい!?」
って、オイ!!空気読まないにも程があんだろと思ったら・・・
「もちろんいいですよね、風早くん。」
って、爽子に極上の笑顔を向けられる。
「あ――・・・うん・・・。」
と言う他に俺に言える言葉があっただろうか?
「おれさー、一人暮らし始めてから手料理に飢えててさ~。」
って、知るかっっ!そんなこと!!
それから何故か俺んちでたびたび三人で食事会をすることになった。
なんでこんなことになったのか、誰か俺に教えてくれないだろうか・・・
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