2 花婿とご対面
会場に着くと、「予定より少し遅くなっちゃったから急いで、爽子!!」と
お母さんに手を引かれて花嫁控室に急ぐ。
入口を通った時、「風早家、黒沼家、結婚披露宴」と書いてあったような気がしたんだけど、ちらっと見ただけだから違ったかもしれない。
希望的観測による空目なのではないだろうか・・・
花嫁控室に入ると、綺麗な女の人がふたり待っていた。
「あ、おはよう爽子。10分遅刻だね、珍しい。」
聞き違いかな?貞子じゃなくて爽子と呼ばれた気がする。
いや、爽子であってるんだけど、でも、誰もそんなの呼ばないし・・・
「・・・あれ?矢野さんと吉田さん?!」
「え?『矢野さん』!?なんか懐かしい呼び方・・・どーしたの?」
「ホントどーした、爽子。あたしもう『吉田さん』じゃないんだけど!」
「あ、あやねちゃん、ちづちゃん、実はね・・・」
とお母さんが、私が高1の私だと説明してくれる。
「でね、誰と結婚するのか教えないで連れて来ちゃった~♡」
「なんじゃそら!な~に面白いことになっちゃってんの、爽子!」
「でね~、ドレスを着れたら、私が旦那様を呼びに行ってね、
ここでご対面させちゃおうかな~なんて思うんだけど。」
「じゃあ、ちゃっちゃとドレス着せちゃいますね!」
「え?矢野さんが着せてくれるの?」
「やのちん、ここでブライダルの仕事してんの。
今日は特別に爽子の化粧とか着替えとかサポートすることになってんの。」
「えー!?凄いなー、矢野さん!そんなお仕事してるんだー!」
「ご対面とかするんなら、尚更ちゃっちゃとやんなきゃ!ちづも手伝って!」
「じゃあ、私、旦那様呼んでくるわね!!」って
相変わらずお母さんは楽しそうだ。
お母さんにとって高1の私でも24歳の私でもそれほど問題はないのかな?
私はもう、どうしていいかわからないんだけど・・・
あれよあれよと言う間に、息の合った二人に純白のウェディングドレスを
着せてもらって、これはホントに私、お嫁さんになるみたい・・・
「それにしても爽子、なんでそんなことになっちゃったの?」
「私にもさっぱり分からなくて・・・昨日は肝試しで、今日は終業式、
のハズだったんだけど、目が覚めたら今日は結婚式だって言われて・・・
私、こんな状態で結婚なんてしちゃっていいのかな?」
「う~ん・・・でも、まあ、いいんじゃない?大丈夫でしょ、多分。
旦那さんついてるし!この日を心待ちにしてたもんねえ・・・
延期なんてことにしたら、旦那さんが困るんじゃない?」
「そうだな~、爽子は高校の時から料理とか出来たし、
奥さんするのに困ることあんまりないんじゃない?」
そうなのかな、大丈夫なのかな・・・
なんて思ってたら、誰かが走ってくるような足音が聞こえて
この控室の前で止まって・・・
「爽子!!」って叫びながらドアを開けた。
入ってきた人はやっぱりどう見ても風早くんで、
でも、なんだかかなり大人っぽくなってて、カッコ良くて、
いや、もう、高校生の時から十二分にカッコ良かったんだけど・・・
しかも、白いタキシードなんか着てるもんだから、
制服のネクタイ姿だってまぶしかったっていうのに・・・
もう何か、頭に血が上ってクラクラしてしまう・・・
っていうか・・・私の旦那様って・・・ホントに風早くん!?
「お義母さんに聞いたんだけど・・・」と言いながら
部屋に一歩踏み入れて風早くんが固まってしまった。
私を見つめて独り言のように
「かわいー・・・すごく綺麗だ・・・どうしよう、惚れなおす・・・」と呟く。
固まった風早くんに私もボーッと見惚れてしまう。
「・・・私の結婚相手って・・・風早くん・・・なの?」
「えっ!?えええっ!!ちょっ、爽子!! 誰だと思ってたの!? 」
と、風早くんが慌てるから申し訳なくなる。
「だって、お母さん、クラスメイトだとしか教えてくれなくて・・・」
「それで、爽子は誰だと思ってたの?!」
「クラスメイトだと言われて思い浮かんだのは風早くんだけなんだけど、
どう考えても、私が風早くんのお嫁さんにしてもらえるなんて
考えられないっていうか、ありえないっていうか・・・」
「ありえなくなんかないよ!!
それから、お嫁さんにしてあげるんじゃなくて、
俺がお嫁さんになって欲しくて、来てもらうんだからね!
爽子は多分もう少し仕事してから
結婚とか考えてたんじゃないかと思うんだけど、
俺が爽子を好きすぎて、早く一緒に暮らしたくて、
我儘聞いてもらった感じだと思ってるんだ!」
「あーもー、歯が浮くわ~!
ちょっと、旦那さん!爽子、高1らしいんだからさ、見てよ、
キャパオーバーになっちゃってるじゃないの!」
と言う矢野さんと吉田さんがボーっとしてふらつく身体を支えてくれる。
えーと、えーと・・・なんか凄いことを言ってもらっているような・・・
風早くんが私のことを好きすぎるって一体どーゆーことですかー!?
「・・・さ、爽子!!」
と言って、風早くんが何か耐えてるみたいな顔をする。
「ちょっと~、あたしとちづにジェラシー感じるのやめてくださーい。
あんたがこっち来て爽子を支えてあげなさいよ!
でもね、昨日までみたいな接し方すると今の爽子は
キャパオーバーになるってのは忘れないように!!」
そう言われた風早くんがスッと私の目の前に来て
「うん・・・。俺が支えるから。大丈夫だよ・・・
今日はただ、俺の横にいるだけでいいから。
俺を信じて、ね、爽子・・・」と言って、
私の手を取ると、腰を抱いて支えようとしてくれる。
わ、分かるんだけど・・・風早くんに腰を抱かれるとか・・・!
「あーもー、だめ~!
見つめて甘い言葉囁いたり、腰抱いたり、
高1の爽子には無理でしょー!!」
「え?何もしてないじゃん!?
これでダメなの!?どうすればいいの、俺!?」
「だ~か~ら~、風早も純真な高1の頃を思い出して
自分が爽子にどういうふうに接してたか考えてみれば?」
「なんだよ!俺が汚れてるみたいに!
これでも俺、25にしては相当純真なんだからね!」
「か、か、かっ・・・風早くんは、け、汚れてなんかいないよ!」
なんとかこの一言だけ言えたけど・・・
「そお?爽子がこの風早でいいならいいんだけどね。」
「この俺でダメとか言われても、
いきなり高1の俺にもどれと言われても、
よく分かんないし・・・・
っていうか、俺、そんな変わったかな!?
爽子のためならそりゃなんとかしたいんだけど
どーすりゃいいのか分かんねえし!
それに、俺も高1に戻ったら結婚できないじゃん!!」
「あ、風早、壊れた・・・」
って吉田さん・・・え!?壊れ・・・?
「お、俺がこの日をどれだけ心待ちにしてたかなんて
どーせ誰にも分かるわけないんだー!」
叫ぶ風早くん・・・もう私はとても会話に入っていけない・・・
「あー、そんなことないよ。横で見てたら結構わかったからさ。
とりあえず、今日を乗り越えたら二人でいいようにすりゃあいいじゃん。
だから、今日のところはスキンシップはなるべく控え目で、よろしく。」
矢野さんが一番この状況に適応してるかも、凄いな!
「う~・・・」何故か唸る風早くん・・・
「そんくらい出来るわよね!?
あたしたちの可愛い爽子を嫁にもらおうってんだから!」
え――!?『あたしたちの可愛い爽子』!?
そ、そ、そんなこと言ってもらえるなんて!!
この私、なんて幸せ者なの――!?
「それとも高1の爽子は
まだ好きじゃなかったとか言うんじゃないだろうな!?」
と、吉田(?)さん。
え・・・それはそうでしょう・・・?
「そんなことない!高1の時から好きだったよ!!」
「え――っっ!?そ、そ、そんなバカな!!」
「あー・・・うん。そういう反応なのはわかってる。
俺もあんまりこの状況についていけてないけど、
多分爽子が一番混乱してるよね・・・
だからフラフラになっちゃうのも仕方ない。
仕方ないから、腰を抱いて支えるのには
悪いけど早急に慣れてもらうしかないんだ、ごめんな。
それ以上のことは今日はしないから安心して。」
「は・・・はい。」
と返事はしたものの、
これから腰を抱かれて人前に出るとか、
恥ずかしくて死にそう・・・
24歳の私って、す、凄いな・・・
そして・・・それ以上のことって!?
今日はしないって、今日限定!?
明日からするってことですか!?
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