8 黒沼の返事と男の友情
翌日の放課後、黒沼は真剣な面持ちで返事をくれた。
「風早くんは入学式の日、笑って『ありがとう。』って言ってくれた時から
私のあこがれで、『好き。』って言ってもらえて素直に嬉しかったし、
風早くんのような人に交際を申し込んでもらって
お断りする理由なんかないけれど・・・
私は男子とお付き合いとかしたことないし、恋愛とかもよく分からなくて、
こんな状態でお受けしてもいいのかなって思うんだけど・・・
風早くんはこんな私でもいいって言ってくれるのかな?」
「もちろんいいよ。
黒沼がまだ俺のことよく分かってないのは知ってるし。
とりあえず、俺と付き合ってるんだって思ってくれたらそれでいいんだ。
そのうち俺のことちゃんと好きになってくれたらそれでいい。
付き合うの初めてだって、俺に任せてくれたら全然大丈夫だから。」
そう言ったら、黒沼がなんか『凄いな~!』みたいな顔するから、
今、自分が言ったことを振り返ってマズイなと思って弁解する。
「あ、ごめん!!なんか今、俺、凄い偉そうで!
なんか、黒沼は初めてでも俺は経験豊富だから
大丈夫だし任せてみたいに聞こえたらごめん!
全然そんなことないんだ。
俺だって、女の子のこと好きになって付き合いたいって思ったのも、
付き合ってくださいって言ったのも黒沼が初めてなんだ。
中学の時なんて、部活ばっかで彼女欲しいとか作ろうとか思ったこともなくて、
だからって、高校に入ったら彼女作るんだって意気込んでたとか
そんなこと全然なかったんだけど・・・黒沼と出逢っちゃったら
その、黒沼のこと、ホントに自然に好きになって・・・
いや、だからって、俺が好きになったんだから
黒沼も俺を好きになるのが当然だと思ってるとか
そんな自信満々とかでも全然なくて・・・
あー、もう、俺はベラベラと何言ってんだろう・・・」
「あ、あの・・・なんかとっても一生懸命に
真剣に言ってくれたんだなっていうことは伝わりました。
私なんかをそんなに思ってもらって恐れ多い気がします。
えっと、その、不束者ですがよろしくお願いします。」
最後の一言は、プロポーズした時に貰った言葉と同じで、
なんか婚約できたような気がしちゃうけど
俺はまだ高1で、もちろん黒沼だって高1で
まだまだ黒沼とのことは始まったばっかだ。
っていうか、まだ好きになってもらってないから
始まってもいない感じだけど・・・
とりあえずは・・・『ひとりじめ』できたかな?
翌日の放課後、俺があからさまに機嫌が良かったようで、
ジョーやアンディに「なんかいいことあったのか?」って訊かれて、
「うん、実は、黒沼と付き合えることになった!」って言ったら、
なんて言うか、微妙な顔をされた。
「マジで?風早、ホントに貞子と付き合うの?なんで貞子?」
なんてジョーは訊いてくるし・・・
「なんでって、そんなの好きだからに決まってるだろ!
それから、『貞子』じゃなくて、『爽子』だし!!」
「やっぱ、分かんねえよ。
だってあの3秒目が合ったら呪われるっていう貞子だろ?
風早、モテるのになんでよりによって貞子?
俺にはどこがいいのかさっぱりわかんねえんだけど・・・」
「呪われるって、そんなわけ無いだろ!
どこがいいのかなんて、俺以外のやつには分かんなくてもいいの!
俺が好きなんだからそれでいいじゃん。
ジョーに分かってもらわなくても全然構わないし!」
「怒んなよー、風早ー。そーだよな、好みは人それぞれだよなー。
風早の好みがそんなマニアックだって知らなくてさー。」
「マニアックじゃねえし!黒沼、めちゃめちゃいい娘だし!!
あ、そうだ。今日から黒沼と帰るから、俺。」
「え――っ!俺たちと帰んないの?男の友情ってそんなもん?
彼女出来たら彼女を取るの?酷くね?なあ、アンディ!」
「いや、俺も彼女出来たら彼女と帰りたいな。」
「そんなー!彼女出来たら男の友情終わりー!?」
「いや、別に友達やめるわけじゃないしさ。
でもとりあえず黒沼と帰りたいんで。じゃーなー。」
って言って教室を出れば、後ろからジョーの
「かーぜーはーや――っ」って俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
ホント、ジョーって面白いやつだよなー。
そう思いながら黒沼がいる花壇に向かう俺は
自分の顔がニヨニヨしてんなって分かるんだけど
どうしても表情筋が緩むのを止められなかった。
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