2 二人だけのひみつ
おれは風早しょう太、小学2年だ。
おれたちがここ、北ほろニュータウンにひっこしてきたのは
二年保育のようちえんに入園するのに間に合うようにと
おれが4才の冬だった。
うちがひっこしてきた次の日、うらの家にも人がひっこしてきた。
それが黒ぬま家だった。
うちのにわと黒ぬま家のにわは
低いかきねと細い路地をはさんでつながっていて
ようちえんが始まるまで、どちらかのにわか家で
おれとさわ子ちゃんは二人で毎日あそんでいた。
それはようちえんが始まってからも一年はつづいた。
おれはさわ子ちゃんが大好きだったんだ。
って言うか、おれはずっとさわ子ちゃんが大好きなんだけど
ようちえんの年長の時、同じ組の他の女の子がおれに
「しょうたくんのおよめさんにして!」と言ってきた。
おれはさわ子ちゃんとすなばのやくそくをしてたから
「おれ、もうおよめさんにするひとはきめてるからむり。」と答えた。
するとその女の子はいきなりおこりだした。
「え!?だれなの?もうやくそくしてるの?
そんなのおかしいよ!ずるいよ!
まだようちえんなのにそんなやくそくしてるなんてへんだよ!」と。
おれはあせった。
「ようちえんなのにおよめさんになってもらうやくそくをするのが
おかしいとか、ずるいとか、へんだとかいわれることだったなんて!
おれがたのんでさわこちゃんにそんなやくそくさせてしまったなんて!」
と、ようちえんじだったから真に受けてしまったんだ。
今思えばその子だっておれにその変なやくそくをさせようとしてたのに。
おれはさわ子ちゃんが変だと言われないためには
どうすればいいだろうとようちえんじなりに考えた。
そしてさわ子ちゃんに言ったんだ。
「すなばのやくそくはおれとさわこちゃん
ふたりだけのひみつにしてくれる?」と。
やくそくしていることを他の人に言わなければ
変だと言われることもないだろうと思ったんだ。
それからおれはさわ子ちゃん以外の女の子がちょっと苦手になった。
なんか女の子の言うことってわけわかんないしめんどくさい。
男同士であそぶ方がだんぜん楽しいと思うようになった。
それと、1年の時からとうちゃんの野球チームに入ったから
ひまさえあれば野球ばっかりやるようになった。
さわ子ちゃんとあそぶのはちょっとへったけど
集団登校でいつもいっしょだったし
なによりおれたちは二人だけのひみつのやくそくをしてる。
あのやくそくを二人だけのひみつにしてよかったなって
さいきん思うようになった。
あのやくそくはやっぱりけっこうてれくさいしはずかしい。
はずかしいと言えば男が女の子を名前に「ちゃん」付でよぶのも
どうやらはずかしいことみたいだ。
だからおれはさわ子ちゃんのことを
他の人と同じようにみょうじでよぶことにした。
きっとさわ子ちゃんもその方がはずかしい思いをしなくていいだろうと思う。
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