4 弟の透太とは6歳違い
俺が5年生の秋、あまり体が丈夫な方じゃない母ちゃんが
夏の疲れが出たのか体調を崩して入院することになった。
入院と言っても検査入院というやつらしくて
一週間で退院と決まっていたからそれほどのことでもないけど
弟の透太はまだ幼稚園で、
幼稚園バスの停留所までとは言え送り迎えが必要だった。
「俺は学校に行ってる時間だし、父ちゃんは店があるし・・・」
と俺が言ったら、透太が自分で黒沼のお母さんの陽子さんに頼んだらしく
「透太くんの送り迎えさせてもらえるなんて私も嬉しいわ!」
と言ってくれたとかで、甘えさせてもらうことになった。
黒沼のお母さんは優しくて可愛い人で、
俺が初めてあった時に「おばさん」と呼んだら
「できれば陽子さんって呼んでくれると嬉しいわ。」と笑ったから
俺は今も黒沼のお母さんを『陽子さん』と呼んでいる。
透太は俺が呼ぶのを聞いていたから初めから『陽子さん』だ。
そして俺よりずっと陽子さんになついていて
幼稚園から帰ってきて、いつの間にか黒沼家に上がり込んで
陽子さんと遊んでることもちょくちょくあった。
うちは店があるから、母ちゃんが入院してなくても店番してて
家の中には誰もいないってことも多くて
小さい透太は寂しかったりしたのかも知れない。
俺は黒沼がいたからそんなこと思ったこともなかったんだ。
母ちゃんが入院すると透太は黒沼家に入り浸った。
晩御飯をごちそうになって風呂までもらって寝にだけ帰って来た。
「ちょっと甘え過ぎだろう。」と俺が言えば
「だって陽子さんと爽子が離してくんねえんだもん。」なんて言う。
「黒沼のこと、呼び捨てにしちゃダメだろう!!」
「えー?だってみんな爽子って呼んでるし。」
「そりゃおじさんと陽子さんは親だからそう呼ぶだろうけど、
とたは近所の子で年下なんだから、
さ、爽子・・・おねえちゃん・・・とか呼んだほうが・・・。」
「そんなん長えよー。
いいじゃん。爽子もニコニコして返事してたし。
別に翔太に文句言われることじゃないんじゃない?
あ、俺、明日も幼稚園だからもう寝るからー。」
「あ、一緒に寝なくて大丈夫なのか?」
「もう子供じゃないんだから一人で平気に決まってんだろ!」
とさっさと自分の部屋に入って寝てしまった。
「いや、幼稚園は絶対まだ子供だろう。
俺だってまだまだ子供なのに・・・。」
俺が今、大人だったら絶対黒沼を恋人にして
「弟のくせに俺の彼女を呼び捨てで呼ぶな!」とか言えるのに。
結婚の約束をしてるったって、口約束で。
しかも最近ろくに話しもしてなくて。
今ももちろん登校班は同じだけど
俺は龍と、黒沼は吉田と並んで登校してる。
だって小学生ってのは男子と女子が喋ってると
必ずからかうもんなんだ。
なんでか知んないけど、俺はやんないけど。
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