6 素敵なこと
中学校に入学して数ヶ月が過ぎもうすぐ一学期が終わろうとしている。
小学校の頃から女の子らしいものが大好きな私は
お母さんに教わった手芸やお裁縫が楽しくて
手芸部に入ろうかとも思ったのだけど
みんなの役に立つ学級委員の仕事もしたくて
結局手芸部には入らずに家で個人的に楽しむことにした。
伸ばしていた髪の毛もやっと背中の真ん中辺りまで伸びて
お姉さんな感じがして嬉しい。
風早くんと真田くんは野球部に入部して毎日練習に余念がない。
私は学級委員長になったので何かと放課後はお仕事があって
いつもなんとなく最終下校時間まで学校にいる。
ちづちゃんも帰宅部なんだけど
毎日野球部の、というか真田くんの応援に行っている。
そして適当なところで引き上げて私の仕事の応援にも来てくれたりする。
部活を終えた風早くんたちと校門であって一緒に帰ることもよくある。
私は嬉しいんだけど、いいのかなあ?
相変わらず風早くんのモテ期は続いていて
風早くんを好きな娘はたくさん居るらしくて
私なんかと変な噂とかにならなければいいんだけど。
四人で帰ってきて、真田くんとちづちゃんと別れて二人になったとき
風早くんに少しその話をしたら、
「黒沼は俺と噂になったら困る?」と訊かれた。
「わ、私は困らないけど・・・風早くんが・・・」
「・・・じゃあさ、黒沼と俺が一緒に帰るのが当たり前なら
黒沼も変な心配しなくていいんでしょ?」
「え?あたりまえって・・・?」
「うん・・・。黒沼が良ければなんだけど・・・俺と・・・つきあう?」
「・・・つきあう、と言いますと?」
「うん、その・・・彼氏彼女になるってことだけど・・・。」
「え!?だって私達まだ中学生になったばかりだよ・・・。
は、早くない・・・かな?」
「んー、早いっちゃ早いけど・・・
小学校の時にもつきあってる人達もいたし
俺達、一応結婚の約束してんだしいいと思うんだけど
・・・黒沼はイヤ?嫌なら言って!」
「嫌だなんてそんな事あるわけないよ。
でも、そんなことしたら・・・
せっかく風早くんモテモテなのに・・・。」
「俺は黒沼以外の娘にモテたいなんて思ってない。
・・・黒沼は俺が他の娘にモテてるほうがいいの?」
「風早くんが素敵な人だからみんな好きになるんだよ。
私はモテたことなんかないから思うんだけど
それってすごく素敵なことだと思う。」
「『素敵』か・・・
黒沼、あの約束した時も『素敵』って言ったよね。
黒沼にとってそう思ったのは
お父さんやお母さんみたいに結婚して家庭を作るってこと?」
「え?・・・うん。そうだね。
私、お父さんとお母さんのことは素敵だって思ってる。」
「俺はそれを黒沼と、ってところが一番重要だったんだけど
黒沼の重要なとこは幸せな結婚の方だったんじゃないの?」
「え?え?・・・」
「俺とじゃなくても良かったんだよね。」
風早くんは何を言ってるんだろう?
約束したのは風早くんとなのに・・・
幼稚園の頃から風早くん以外の人となんて考えたこともなくて
風早くんとじゃないって
どういうことなのかわからない・・・
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