9 風早視点
今日は少し余裕を持って学校についた。
いつもこうだといいよな、うん。
あ、あれは・・・黒沼と友達になったって言ってた夏目さんだ。
ササヤンが夏目さんのこと好きだって言ってたっけ。
俺、だいたい苗字呼び捨てて呼んじゃうけど、
ササヤンが『夏目さん』って呼んでるのに、
さすがに呼び捨てで呼んじゃまずいよな。
「夏目さん、おはよう。」
「あ、風早君。おはようございます。
・・・あっ!クッキーですよ!風早君!」
そう言われて思わず夏目さんの視線の先をたどると、
黒沼とでっかい男子がなんだか楽しげに談笑している。
多分、クラス委員に立候補したりして目立ってた三浦ってやつだ。
「おっはようございます!クッキー!」と手を振り駆け寄ろうとして、
振り上げた夏目さんの手が固まる。
なんで黒沼が三浦と?って思ってたら、
いきなり三浦は黒沼の髪に触り始めた。
初めは前髪だけだった。
それだってびっくりしたっていうのに、
次に顔の横からかき上げて、
最後には項から全体をまとめて後ろに持っていった。
三浦がでかくて、黒沼は小柄だからそんなことしたら
三浦の懐にすっぽり収まっちゃって、
まるで抱きしめられてるみたいで、
目撃してしまった俺は、軽くパニックになった。
なにしてんだよ!黒沼に!!
黒沼も黒沼で、なんだかちょっと嬉しそうですらあって、
嫌じゃないの、そいつにそんな事されて!?
更に黒沼が手をかざすと、それに三浦が手のひらを合わせてきて・・・
なに・・・朝の教室前の廊下で手を合わせて
微笑み合ってるってどういうこと!?
いつの間に黒沼と三浦ってそんなに仲良くなったわけ?!
隣であっけにとられてた夏目さんが我に返ると、
プルプル震えて怒りだした。
「な、な、な、なにしてくれてんですかー!?
私のクッキーにーーー!!!」
そう言いながら三浦に掴みかからんばかりの勢いで突進していった。
せめて俺も
『なにしてくれてんだよ!俺の黒沼に!!!』って
言える立場だったらな・・・
もう少し前までは、黒沼にとって男子の中じゃ一番近い存在だと、
思えてたんだけど、今はとてもそんな風には思えない。
だって最近会話も殆ど無い有り様だし。
話す回数ならきっとササヤンのほうが多いくらいだ。
だけど、夏目さんがあんな風に怒るってことは、
三浦もまだあんな事するのが
当たり前の仲って訳じゃないんだと思う、思いたい。
今ならまだ間に合うのかもしれない。
それに、正直、もう、俺の中で持て余してしまうほど
黒沼への気持ちは膨れ上がってしまっているんだから。
俺の気持ちを黒沼にぶっちゃけてしまいたい。
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