3 座敷童子が育って可愛くて綺麗な女の子になるなんて予想外だよね。
「じゃあ、鍵は渡しとくわ。せいぜい仲良くやってくれ。
あー、家賃は四月からでいいけど、部屋は今から使ってくれていいぜ。
黒沼は寂しがり屋だからな、準備がてらちょいちょい来てやってくれよ。
あ、それからな、座敷童子は居る家を栄えさせるが、
出て行った家を廃れさせるって言われてるんだよ。
くれぐれも黒沼に出て行かせるようなことはすんなよ!じゃあな!」
と、俺の役目は済んだとばかりに荒井さんは行ってしまった。
5号室に黒沼といきなり二人で取り残されて、なんか黒沼がモジモジしているようなので、
俺の方からなんか話しかけないとと、思ってたことをとりあえず口にする。
「でも・・・まいったな。俺、座敷童子ってもっと、子供なのかと思ってたよ。」
「え?あ、ごめんなさい。長年やってるうちに育ってしまって・・・」
「あ、いや、俺が勝手にそう思ってただけなんだけど・・・
君みたいに綺麗な女の子と俺なんかが一緒に住んじゃっていいのかな?」
「き、綺麗?!私が?!」
「綺麗っていうか、可愛いっていうか・・・今まで言われたこと無い?」
「今までの人たちにはかなり怖がられてましたから、ほとんど目を合わせてもらえなくて、
こんなにフレンドリーに接してもらったのは風早君が初めてなので・・・。」
「今までの入居者って俺みたいな学生が多かったの?」
「そうですね。大体荒井先生のとこの男子大学生さんでした。」
「え?家主さんって先生なの?大学の?」
「ご存じなかったですか?ここに住んでる人たちは殆どあの大学の学生さんです。」
「そうだったんだ・・・」
でも、今までの人が怖がって目を合わせなくて良かったんじゃないかな?
だって俺の目には黒沼、凄く綺麗で可愛いくみえるんだけど・・・
そんな女の子が男子大学生と一緒に住んだら危ないよな、普通・・・
そんなこと思う俺がそもそも変なのかな?
あの出て来かたからすると実体はないのかもしれないし。
「他の部屋の人は黒沼の存在知ってるの?」
「私はこの部屋から出ないので知らないんじゃないでしょうか?
私、力が弱いのかこの部屋の外のものに触れられないんです。」
「この部屋の中のものなら触れるんだ・・・じゃあ、俺には?」
「人の場合は・・・信じてくれる人には触れるようなんですけど・・・」
「じゃあきっと触れるよ。握手してみよっか?」と、右手を差し出してみた。
黒沼も恐る恐る右手を差し出してくれるから、
ちょっと迎えに行く感じで手をとってきゅっと握って握手する。
意外に暖かくて柔らかなその手に軽く感動する。
女の子の手ってこんな感じなんだなあ。しかも、温かいんだなあ。
なんか軽いノリで『握手してみよっか?』なんて言ったけど
今まで女の子と握手なんかしたことなくて、
思わず握り合った手をじっと凝視する。
「あ、あの~・・・離していただけませんでしょうか・・・。」
「え?あ!ご、ごめん!!
予想外に握り心地が良くて・・・って何言ってんだ!」
と、慌てて手を離す。
「え?握り心地良いですか?
だ、だったら、え、と、こんな手で良かったら
存分に握ってもらって全然いいんですけど・・・。」
そう言っておずおずと再び手を差し出す黒沼に、
「ダメ!そんな甘いこと言っちゃダメだからね!
俺直ぐ調子に乗っちゃうから!」と、一步下がって距離を取る。
どうしよう、めちゃめちゃかわいいんだけど・・・
座敷童子ってこんななの?
同級生の女子とかと喋ってもこんなにドキドキしたこと無いよ、俺・・・
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