16 風早視点
今、俺は屋上への階段に座って黒沼を待っている。
黒沼が階段を登って踊り場まで来た。
最近ではあまり見なくなった一年の時の
「貞子」と呼ばれる雰囲気をにじませている気がする。
まあ、俺にはそんな黒沼も可愛く見えてしまうんだけども・・・
こういうの「痘痕も笑窪」とか言うのかな。
「か、風早君・・・お待たせしてしまってすいません。」と
覚悟はしてきましたって感じの黒沼が言う。
「早速、単刀直入に言うけどいいかな?」って
立ち上がって黒沼の目の前まで行って訊く。
「は、はいっ!!!」と、ぎゅっと目をつぶって黒沼が待ってる。
「俺、黒沼が好きだ!」
ちゃんと届くように、少しゆっくり大きい声で伝えた。
伝えた・・・んだけど、・・・黒沼はぎゅっと目をつぶったまま
固まって微動だにしない。
どうしていいかわからなくなって、届くまで何度も言うしか無いと、
「お、俺は、黒沼が好きだ!好きなんだ!大好きなんだ!」って、
他に言葉を知らないのかってくらい、「好き」を連呼する。
それでも固まったままの黒沼に恐る恐る尋ねる。
「く、黒沼・・・聞こえてる?」
黒沼の目がゆっくりと開いて、これ以上開かないってとこまで開いて、
「え?」と、一言。
「聞こえてなかったんならもう一度言うね・・・」
と俺が言ったら黒沼は凄く慌てて、
「き、聞こえてます!聞こえてました!!
もったいないので!そんな何回も、ほんとうに、もったいないので!
・・・でも、あの・・・本当に・・・風早君が・・・私を?
あさ子ちゃんの勘違いじゃなくて?」
「勘違いじゃないって言ったでしょ?俺・・・」
「・・・風早君が私を・・・?」
「うん。」
「・・・好き?」
「そう、好き。大好き。
・・・俺は黒沼がどうしようもないくらい好き。
黒沼は、俺のこと・・・好き?」
「私は・・・私の方が・・・
きっと・・・もっと・・・ずっと・・・凄く・・・好き・・・」
「え!?絶対、俺の方が好きだって!!」
「ううん、ううん・・・絶対私の方が・・・」
「だったら・・・」
急に朝の三浦と黒沼がやってたことを思い出して、
右手で黒沼の左手をギュッと掴んだ。
「この手も・・・」
さらに左手で、
あの時三浦にくちゃくちゃにされてたけど
ここに来る前に整えたんだろう、
黒沼の綺麗な黒髪を撫でた。
「この髪も・・・あと・・・黒沼全部、
俺以外の男に触らせたりしないで・・・」
うっかり黒沼の小さくて柔らかい手と艶やかな髪の感触に酔ってたら、
黒沼から「うん。」って、小さく返事が帰った来た。
慌てて少し身体を離して、黒沼と目線を合わせて、
でもやっぱり言ってしまったことに恥かしくなってまた外した。
でもやっぱり言ってしまったことに恥かしくなってまた外した。
「あ・・・ごめん!告白したばっかなのに、なんかすげえ
束縛っていうか独占欲丸出しっていうか・・・
あー・・・こんなの、引くよな・・・」
「そ、そんなことないよ!・・・あの、嬉しいよ!
ほんとに好きだって思ってくれてるんだって、そう思えて・・・。
それに、私も風早君以外の人に触られても、う、嬉しくないし!」
え・・・それって俺に触られるのは嬉しい・・・ってこと?
「これからは他の人からは全力で逃げるので!!」
「・・・あはは・・・うん、逃げてよね!」
三浦から必死で逃げる黒沼を想像したら笑ってしまった。
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