珍しく一気に投稿です。5話で完結です。
二人共同じ大学に通う大学生で
爽子ちゃんがシンガーソングライターと言う謎設定です。
1 黒沼爽子は憧憬する。
2 風早翔太は失言する。
3 風早翔太は特攻する。
4 黒沼爽子は白状する。
5 風早翔太は脱力する。
二人共同じ大学に通う大学生で
爽子ちゃんがシンガーソングライターと言う謎設定です。
1 黒沼爽子は憧憬する。
2 風早翔太は失言する。
3 風早翔太は特攻する。
4 黒沼爽子は白状する。
5 風早翔太は脱力する。
2 風早翔太は失言する。
いつまでも聞いていたい声。
優しいメロディ、心に響く歌詞・・・
まだ新人だが彼女は実力のあるシンガーソングライターだと思う。
今、一番のお気に入りのアーティスト「爽子」の曲を聞きながら
バイト先に向かっている。
彼女の曲は恋の歌なんだけど、
タイトルはいつも食べ物の名前で、
関係なさそうなのに、それがまたしっくり来るっていう
そんな面白さも気に入ってるところだ。
「爽子」は顔出しをしないし、どういう人物なのか謎なんだけど、
俺は曲が好きだから聞いてるだけだから
「爽子」がどんな人でも別に気にならない。
でも、彼女の曲の中の女の子の恋する気持ちには
俺は男だから、こんなふうに思ってもらえたら
男冥利に尽きるよなーとか、
こんなふうに考える女の子って可愛いなーとか思わずにはいられない。
話は変わるけど、近頃の俺には
シンガーソングライターの素顔より気になることがある。
俺はファミレスでバイトしてるんだけど、
そこに来るお客さんで、いつも3時頃に来る女の子がいる。
最近の彼女のマイブームなのか
ここのところほぼ毎日チョコレートパフェを頼む。
毎日って言っても俺がバイトに入る
月、水、金、だけのことしか分からないんだけど
少なくとも俺がバイトの日はいつもだ。
彼女は2,3時間、パソコンに何かを打ち込みながら
チョコレートパフェを完食して、
夕食時で店が忙しくなってくると帰っていく。
長い黒髪が綺麗で、清楚な感じで、
パソコンに向かってる時はなんか鬼気迫る感じで、
でも、俺がパフェを持って行くと、
「ありがとう。」って、可愛く笑うんだ。
なんで気になるのかって言われると説明なんて出来ないんだけど
なんか気になるんだから仕方がない。
でも、俺と彼女はバイトとお客さん以外の関わりはないわけで
さっき言ったことしか知ってることはない。
ホント言うと、すっげー気になってんだけど、
仕事時間中に客として来る彼女にむやみに話しかけることなんて出来ないし・・・
彼女が来る少し前から、彼女が帰ってから数時間あとまで
バイトが続いてるから、彼女が何処から来て何処に帰っていくのか
知るすべもなく、店内以外で話をする機会もない。
2時になってバイトに入る。
今日も3時に彼女は来るだろうか・・・
もうかれこれ一ヶ月くらいチョコパだなー・・・
そうそう、その前は二ヶ月位アイスクリームパンケーキだった。
偶然だけど「爽子」の最新曲が
「アイスクリームパンケーキ」だ。
あの曲すっげー好きだな、可愛くって・・・
正確にちょうど3時に彼女がやって来て
いつもの隅の席に座った。
俺はいそいそと水を持って彼女の席に行って、思わず
「いらっしゃいませ。今日もチョコレートパフェですか?」
なんて言ってしまった。
彼女はヒュッって息を呑んで
大きな目を更に大きく見開いたあと、
真っ赤になって俯いて、
「は、はい。お願いします。」と言った。
うっかりあんな事言ってしまって、
もう彼女が来なくなってしまったらどうしよう・・・
やっぱり店員に「いつもチョコパを頼む客だ。」なんて
思われてるって思ったらあんまりいい気はしないよな。
素直に馴れ馴れしいことを言ったことを謝ろうと
パフェを持って彼女の席に行く。
「お待たせしました。その・・・すいません、変なこと言っちゃって・・・」
「あ、いえ・・・私が度々チョコレートパフェ頼んでること・・・
ご存知だったんですか・・・」
やっぱりあんな事言われて嫌な気分になったんだなって思って
彼女がもう来るのをやめようって思わないように必死で言い募った。
「いつも来てくれるから嬉しくてつい・・・その・・・他意はなくて
変に思わないで欲しいんだけど・・・
出来ればこれからもチョコパ食べに来てください。
ホントに貴女が来てくれるの、すっげー嬉しいんです、俺!」
彼女は頬を染めて俺を見つめて微笑んで
「・・・・・ありがとうございます。・・・これからも来させてもらいます。」と言った。
「よかったー。」と俺が笑えば、彼女もニッコリと綺麗に笑った。
その後、いつにもまして鬼気迫る迫力でPCに何かを打ち込み続けている彼女を
仕事の合間にチラチラ見ては、彼女がすぐそこに居るっていうだけで
なんだか嬉しいっていうか楽しいっていうか・・・なんだかあったかい気持ちになって
それとともに、いつも帰ってしまう時間が近づいてくることが寂しいと思った。
店内が少し混み合ってきて、彼女がいつも帰っていた時間を少し過ぎたが
今日の彼女はPCでの作業が乗っているのか作業に没頭している。
俺としては彼女が居てくれるのは嬉しいんだけど、
何か用とかあって、いつもの時間に帰ってるんだとしたら
時間を過ぎてることを失念しているらしい彼女がこの後困るんじゃないかと
ちょっとハラハラする・・・だけど、『いつも帰ってる時間過ぎてますよ。』と
言うわけにもいかないし。
店員の男にいつも頼むメニューの上に、いつも帰る時間まで把握されてるとか、
それは多分気持ち悪いよなあ、よく知ってる相手だって言うならまだしも
俺は彼女にとって見ず知らずのよく行く店の単なるバイトの男だもんな。
そんなこと思ってたら、彼女が慌てて帰り支度をするのが見えた。
PCを鞄にしまい、赤い財布を出して代金を用意する。
だいたいいつも丁度の金額を席で用意してキャッシャーに持ってくる。
かなり焦っていたみたいで、硬貨を一枚落としてしまい、たまたま俺の方に
転がってきたから拾って、「はい。」と、硬貨を渡して、「お会計ですか?」と聞いたら、
「わ、わ、わ・・・・そーです。もう帰りますー!」って、もうたまらなく可愛い。
俺がキャッシャーにむかうと、彼女が急いで席に取って返し、
残りの硬貨と伝票と鞄を持って来て会計を済ませると、
「ごちそうさまでした。」と帰っていった。
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