7 帰路
「結構楽しかったよね、オリエンテーション。」と、貞子ちゃんに話しかける。
「うん!今日、矢野さんと吉田さんといっぱいお話出来てね!
かなり仲良くなれた気がするの!」
そう言って嬉しそうに笑う貞子ちゃんをほんとに可愛いって思う。
「うん。もうすっかり友達だね。」
「ええ!?いや、そんな、友達だなんて、おこがましいよ!」
馬鹿げてるけど、ちょっと矢野さんと吉田さんに嫉妬する。
「ふーん・・・じゃあ、俺は?」
「み、三浦くんは中学からのお付き合いなので
友達って言ってもいいかなって思ってるんだけど。」
「全然いいけど・・・俺としては彼氏って呼んで欲しいとこなんだけどな~。」
「え!それは、その・・・前にも言ったとおり、その・・・」
「あ~、分かってるよ、ごめん!蒸し返して。
・・・『今までどおり友達で』だよね。
分かってるけどさ、俺、貞子ちゃんのこと諦めてないからね。
とりあえず今のところは『今までどおり友達で』いいけど、
いつかは貞子ちゃんに好きになってもらって、
彼氏に昇格したいって思ってるから。
・・・まさかと思うけど・・・俺のこと、嫌い?」
貞子ちゃんは人のこと『嫌い』なんて言わないと思いながら訊く。
「え!?いや、まさか!嫌いなんてことあるわけないよ!!」
「じゃあ、好き?」
「え、ええっ・・・と、その・・・友達としては、す、好きだよ。」
「もしかして貞子ちゃん、友達としてじゃない好きな人、居るの?」
「えっ?!」
「いいんだよ、それは貞子ちゃんの気持ちなんだから。
できれば貞子ちゃんが俺を好きになってくれて
彼氏にしてくれたら嬉しいけど、
だからって貞子ちゃんが
他の誰かを好きになっちゃダメなわけじゃないよ。
俺だって応えてもらえないまま
ずっと貞子ちゃんのこと好きで居るかどうかなんて
そんな先の事はわからないし、
他の娘のこと好きになることもあるかもだし・・・
貞子ちゃんもさ・・・もしかしたらやっぱりセンセーの事
好きなのかな~・・・ってさ、思っちゃって・・・」
「え、ええっ・・・センセーって、風早先生のこと!?
それは、その・・・えっと・・・」
「今度は否定しないんだね。
もしかすると自覚した?」
「私が嫌だって思ったところで仕方がないんだって思っていたんだけど・・・
告白されて断ったっていうことも、
今までお付き合いとかしてないって言うことも、
聞いてホッとする私が居るのも本当で・・・
だからって私が!・・・なんてとても考えられないのだけれど・・・
それに風早先生にとって私は生徒だから、
有り得ないのだけれど・・・」
「俺もさ・・・貞子ちゃんに好きな人がいてくれたほうが
諦めやすくなるからいい気がするんだ。
貞子ちゃんには幸せになって欲しいんだよね。
俺が貞子ちゃんを幸せにできたら一番良かったんだけどさ・・・
なんか自分でも俺じゃないんじゃないかなって・・・
思っちゃってたところもあるんだよね・・・」
「み、三浦くんっていい人だね~・・・」って、貞子ちゃんが目を潤ませる。
「今更だよ~~。」って言いながら、
うん、俺も自分で思うよ。俺ってイイやつ過ぎる。
「あ、そうだ・・・あのね、三浦くん・・・
さっきのバスでの話なんだけど・・・
ちょっと聞きたいことがあって・・・」
「え?何?俺で答えられることならなんでも訊いて。」
「じゃあ、あの・・・
『どうてい』って、どういう意味?」
にっこり笑って貞子ちゃんが
『先生、質問です。』みたいな感じで訊いてきた。
バスん中で、随分なこと言うなって思ってたけど、
知らない子は言葉自体知らないんだなあ、そっかー・・・
なんて思いながら貞子ちゃんの方を見たら、
穢れを知らないキラキラした目をして答えを待ってた。
「あ――・・・それは・・・知らなくてもいいっていうか、
俺の口からは明言を避けたいっていうか・・・
かと言ってセンセーには訊かないであげて欲しいっていうか・・・」
「え?え??そうなの?あんまり良くない言葉なのかな?」
「う~ん・・・どうしても知りたいなら辞書を引いてもらえるかな~・・・
まあ、辞書を引いたら、貞子ちゃん更にホッと出来るかもね。」
PR
この記事にコメントする
カウンター
カテゴリー
最新記事
(08/10)
(03/25)
(10/26)
(09/30)
(08/31)
(08/23)
(08/21)
(05/15)
(02/17)
(01/28)
ブクログ本棚
プロフィール
HN:
かのまま
性別:
女性
趣味:
絵を描いたり文字書いたり。
自己紹介:
このブログとPixiv以外で作品の公開はしていません。
印刷物の制作等はしていません。
日本語以外に対応できる語学力は持ち合わせていません。
印刷物の制作等はしていません。
日本語以外に対応できる語学力は持ち合わせていません。
AdMax