6 奇跡を現実にする第一歩
「厚労省に連絡して、黒沼さんご一家と顔合わせすることになったからな。」
と父ちゃんが言った。
「え?父ちゃんが連絡を!?」
「あたりまえだ。男の側の親の務めだからな。
10日だ。ちゃんとその日は空けておけ!」
「うん。分かった。」
通知をもらったのが大晦日で
三賀日の間にすっかり話は出来上がっていたようだ。
こんなに早く話が進むとは思ってなかったので少なからず驚いている。
とは言えこの話がどんどん進んでくれるのは嬉しい限りだ。
でも、そんなに急いでも俺が18になるまでは結婚できないんだけど。
「ところでお前、政府通知を受け取ったとき
黒沼さんのお嬢さんと一緒だったと聞いたが
どういう間柄なんだ?まさかお前ふらちなことを・・・。」
「え!?いやっ、そんなんじゃない!!
クラスメイトなんだ!
あの時はあと何人か一緒に行くはずだったんだけど
都合悪くなったとかで二人だったけど・・・。
黒沼はすごく真面目ないい子で・・・
だからそんなんじゃないから!!」
「政府通知の相手が知ってる娘だったのなら
なにか思うところがあっただろう。
良いと思ったか悪いと思ったか?」
「良いと思ったよ。
すごく嬉しかった。
嬉しいと思ってるって黒沼に伝えたら
黒沼もだって言ってくれた。」
「そうなのか。ならなんの心配もないんだな?」
「うん。父ちゃんも母ちゃんもきっと黒沼のこと気にいると思う。
だから後は俺が黒沼のご両親に
よっぽど気に入らないと思われなければ・・・。」
「ふん。お前は外面がいいから大丈夫なんじゃないか?」
「なんだよ、ケンがあるなあ。
でもまあ気に入ってもらえるように頑張るよ。」
「婚約するんだから身奇麗にしておけよ。
もし彼女とかいるんならちゃんと話をしてだな・・・。」
「え?父ちゃんは婚約したときそういう身辺整理とかしたの?」
「お、俺はそんな必要なかったからな。」
「そうなんだ。あ、俺もそんな必要ないけどね。」
「そうなのか?おまえ、そんな甘いマスクのくせに。」
「は!?え、父ちゃん俺のことなんだと思って・・・。」
「お前が中学の頃、学校で女子に人気があるらしいと
真田に聞いてだな・・・。」
「真田?・・・龍のこと?」
「いや、親父の方だ。」
「あー、じゃあソースは吉田かな・・・
何回か女子に『好きだ。』って言われたことは有ったけど
付き合ったことなんかないよ、俺。」
「そうなのか・・・付き合いたいと思ったこともないのか?」
「初めてそう思ったのが・・・黒沼なんだ。」
「そうか・・・よかったな。
でも、婚約すると言っても結婚は
お前がちゃんと仕事をして
生活できるようになってからのことだからな。
それまでに破談になったらそれまでだからな。」
「わかってるよ。」
冗談じゃない。破談になんかするもんか。
大好きな黒沼が政府通知の相手だなんて、
そんな奇跡みたいなことを台無しにするなんてできるわけがない。
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